糖尿病
糖尿病は膵臓のランゲルハンス島というところから分泌されるインスリンの低下あるいは作用不足により様々な症状を来す疾患です。
原因
インスリンは細胞が糖質を利用するために不可欠で、この病気はエネルギー源である糖質が摂取されても細胞の中に入ることができないため、利用されず血液中に貯まり、高血糖となるのです。
そのため種々の血管障害や神経障害が見られます。また、細胞内に取り込まれないため細胞の中では飢餓状態にあり、種々の代謝障害が起こってきます。
小児の糖尿病はT型糖尿病(インスリン依存型糖尿病:IDDM)とU型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病:NIDDM)があります。
T型は自己抗体により、インスリン分泌細胞が死滅し、、絶対的欠乏となるもので、小児に特有のものです。
U型は主として肥満によって起こりインスリン分泌はありますが、分泌していてもインスリン感受性が低下しているため症状が出るものです。成人に多いタイプです。
症状
糖尿が見られます。無症状で学校検尿や検診などで見つかることもあります。多飲や多尿、やせで検査して気づかれることもあります。
血糖値は高く、高血糖により、血漿浸透圧が上昇し、組織から血管内へ水が引き出され、結果的に多尿となります。口渇、多飲を起こします。高血糖により、腎臓から糖が漏出し、糖尿になります。組織内では糖の欠乏による利用障害が起こり、食欲亢進、やせが見られます。特にT型糖尿病では糖利用が顕著に障害されると、脂肪が燃焼して大量のケトン体を作り、ケトアシドージスとなり、腹痛、嘔吐、過呼吸、さらには意識障害、昏睡となっていきます。この場合尿中ケトン体は強陽性になっています。
診断
症状とともに、随時血糖ないし糖負荷試験2時間後の血糖が200mg/dl、または空腹時126mg/dl以上で、さらに高血糖が別の日に確認できれば糖尿病と診断します。
治療
T型糖尿病ではインスリン治療が必須です。無症状のこともありますが、昏睡や脱水を起こして意識障害などで発症する場合があり、緊急入院が必要となることもあります。
急性期の治療後血糖値が落ち着いたら、生涯インスリン治療を行います。
各食前に即効型インスリンを就寝前には持続型インスリン製剤を皮下注射します。自分でできるようにします。
インスリン治療はなかなかスムーズには行きません。いろいろなタイプのインスリン製剤を使って、血糖、尿糖を参考にしながら高血糖、低血糖にならないようにしていかなければなりません。
食事は落ち着くまではある程度の制限をし、コントロールがうまく行き始めたら通常に戻します。エネルギーは十分に必要です。運動は普通通りにします。
U型糖尿病では通常肥満があり、食事療法、運動療法が主体で、肥満度が20%以上あれば同年齢児より摂取エネルギーを65〜80%に制限します。もし肥満がなければ食事構成を見直し、カロリーの制限をします。摂取エネルギーの10%は運動で消費するようにしましょう。成人後の合併症を予防するため、血糖を管理し、良好な発育が得られるようにしていきます。
追加の解説
飢餓時の反応
血糖維持のために、まず肝臓のグリコーゲンが動員されますが、小児では貯蔵量が少なく、血糖維持は4〜6時間が限度とされています(成人では6〜12時間)。グリコーゲンが枯渇すると糖新生がはじまります。その供給源は骨格筋由来アミノ酸(アラニン)、乳酸、脂肪などです。肝臓にて脂肪をβ酸化し、エネルギー(NADH2+)を産生し、糖新生を行ってブドウ糖を供給します。β酸化亢進によってできた余分なアセチルCoAはケトン体(アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸)に変換されます。筋肉(心筋、骨格筋)、脳、腎、副腎などでケトンは利用されますが、余剰のケトンは血中に増加していきます。また、糖新生には骨格筋由来の糖原性アミノ酸(アラニン)やオキサロ酢酸の炭素骨格が用いられます。したがって、筋肉量の少ない小児は糖新生が十分でなく、低血糖を来しやすいのです。また、ビタミン(B1、B2、ビオチン)の不足も糖新生が十分に行われず、ケトン性低血糖の発症の原因になりやすいのです。ただし、小児は空腹が続くとアセトン血症を来しやすいので、感染症の場合などでも尿ケトン陽性になることが珍しくありません。(文献 47 P 295)
ケトン体
アセト酢酸、β-ヒドロキシ酢酸、アセトンの3物質をケトン体といいます。ケトン体は血中の脂肪酸を原料として、肝臓のミトコンドリアで作られます。ケトン体が産生されると同時にATPが産生され、このATPには糖新生に利用されます。
糖尿病性ケトアシドージスの際のケトン体が多量に産生される場合は、糖新生を必要とされる状況、すなわちインスリン作用が著しく低下し、血糖値を正常に維持するため、末梢にグルコースを必要とする場合です。