口腔アレルギー症候群(OAS)
口腔アレルギー症候群(OAS)とは、ある特定の果物や野菜を食べることにより、口・唇・喉などの口腔粘膜やその周辺組織にイガイガ感などのアレルギー症状が起きる食物アレルギーの特殊なタイプです。口腔アレルギー症候群(OAS)の多くは花粉症に合併しています。原因は花粉症の原因物質と似た物質が果物等の食物に含まれていることから、この現象が起ると考えられています。花粉症を先に発症して、しばらく経ってから本症を発症することが多いようです。このため、乳幼児期よりも学童期以降の発症が主となります。幼児では花粉症よりも先に本症が発症することもあります。
子どもはOASの症状を気分が悪くなる、嫌いと表現することも多く、注意が必要です。
症状
食物摂取後15分以内に局所または全身症状を認めます。
全身症状
じんましんなどの皮膚症状
気管支喘息症状
ときにアナフィラキシーショック
局所症状
口、唇、喉などの口腔粘膜にかゆみ、ピリピリ・イガイガ感、ムズムズ、つっぱる、喉が詰まる感じ、腫れなど
喉咽頭部の浮腫、水ほうなど。 予防と対策
原因になる食物は避ける
原因食物との交差性のある花粉の飛散時期に、発症・悪化するため飛散時期は花粉対策も合わせて行いましょう。
検査・診断
確定診断には抗原に対するラスト(RAST)というアレルギー検査を行います。
花粉症の人はこんな時期、こんな食物に注意して下さい
キウイは食物アレルギーの原因として10位以内に入り、OASの食物原因として知られています。また、バナナはキウイに次いで頻度の高い果物でショック症状を起こす可能性がある果物として認定され、アレルギー表示において表示推奨食物です。
花粉症の対策
その年の花粉の量などの情報を集めて、花粉の多いときには外出を控えるなど工夫することでかなり防ぐことができます。
マスク、メガネなどでスギ花粉が直接触れたり吸い込まないように工夫しましょう。外出から帰ったら顔、頚部を洗い、家に入る前にコートなどしっかり手で払いましょう。
干していたシーツ、下着、服などに付かないように家に中に干すのも大切です。
◎ハンノキ、シラカンバについて
ハンノキはブナ目カバノキ科の樹木で、シラカンバ、ヤシャブシ、ブナ、コナラなどと同じ仲間です。これらブナ目の花粉間では強い共通抗原性があります。
これらは身近な公園から山地など日本各地に分布し1〜6月に花粉を飛散させます。ハンノキは、スギ・ヒノキと飛散時期が重なるため見過ごされやすいのですが、スギの花粉の飛散時期よりも早くアレルギー症状が出る方はハンノキが原因の可能性があります。
この交差性があるため、知らず知らずのうちに何らかのブナ目花粉に感作されている可能性が高いのです。また、ブナ目花粉間では強い相関が認められるためカバノキ科、ブナ科花粉の感作確認にはハンノキに対する特異的IgE抗体検査である程度予想が可能です。
アレルギー性鼻炎の患者さんではハンノキ感作例の54.8%にOASの既往歴があり、花粉の飛散時期に発症、悪化しやすくなります。また、OASは症状が軽く気づきにくいため、原因物質を繰り返し摂取することで、重篤な症状を引き起こすことがあります。
ハンノキ、シラカンバ特異的IgE抗体が陽性の場合、OASを合併する率は7〜55%と言われています。
◎イネ科の花粉症(カモガヤ、オオアワガエリ、ハルガヤ、ギョウギシバなど)では約20%、ヨモギ花粉症では40%が合併していると報告されています。原因食物はウリ科のメロンや夏に向けて消費量が増えるスイカ、キウイなどが報告されています。
ハンノキ、シラカンバの花粉が非常に多くなる2〜5月の季節はアレルギー鼻炎、アレルギー結膜炎に加えて眼瞼発赤、眼瞼周囲炎などが多くなり、非常にかゆがったり掻いた結果、結膜に菌が入り込み結膜炎になってしまう児が増えています。
特に眼瞼の下の部分が赤く腫れることが多いようです。なかなか手強くて治りにくい状況が続きます。
※本症を誘発する抗原の多くは感染特異的蛋白質(PR-P) との構造上の類似性が高く、このPR-Pは植物界に広く分布し、種属間での相同性が高いため花粉抗原やラテックス抗原と交差性の高い果物や野菜の発症が多いのです。