ネブライザーおよび超音波加湿器の注意点


ネブライザーおよび超音波加湿器の微生物汚染 院内呼吸器系感染の盲点

 病院内で生じる呼吸器系感染症の原因のひとつにネブライザーや超音波加湿器の微生物汚染があげられるが、アメリカ公衆衛生局Centers fbr Disease Control (CDC)では, これら装置の汚染防止のために種々の勧告を行っている1)
 たとえば、“ネブライザーとその貯水槽は,24時間ごとに滅菌または消毒したものと交換する"としており実際によく実行されている2。
しかしわが国では、呼吸器系治療装置の微生物汚染に対する関心は低い。

 濃厚に汚染されたネブヲイザーは、患者の気管支や肺胞に、エアロゾルとともに大量の細菌を運ぷので,呼吸器感染症を起こしうる。
 貯水槽つきネブライザーの汚染は、使用開始とともに速やかに生じる。図には、繁用機種であるウルトラソニック・ネブライザーのおもな汚染源を示した。 汚染菌はAcinetobactorや緑膿菌などのプドウ糖非発酵グラム陰性桿菌およびSerratiaなどが主である。これらの汚染菌は水中で増殖できるので、滅菌や消毒をしないで長期間使用したネブライザーは、 濃厚汚染を受けやすい3)。
Reinhardtら4)は,貯水槽つきネブライザーの40%が平均6×104個/mlのプドウ糖発酵グラム陰性樺菌で汚染され、とくに消毒などをしないで2日間以上使用したものが濃厚に汚染されていたと報告している。
 このように貯水槽つきネブライザーは、時間の経過とともに濃厚に汚染されるので、薬液槽やホースなどは24時間ごとに洗浄および消毒または乾燥を行うのがよい。
ジェット部分の消毒がしにくいジェットネブライザーの消毒は、薬液槽に0.25%酢酸または0.1%タロルヘキシジソを入れて、10分間噴霧する方法があげられている5)。
しかしこの方法は,消毒剤の吸入を防止するため換気に注意しなけれぱならないなどやや面倒である。本法の代りに、溶液や貯水槽を頻回に交換する方法(たとえぱ溶液を12時間ごと)も有効である1)。
なお,滅菌精製氷や滅菌生理食塩水は開封後24時間以内に廃棄し,シリンジも長時間使用しないようにする。
 超音波加湿器屯感染症の原因となりうる。
 Smithらa)は、超音波加湿器に滅菌していない精製氷を長期間つぎ足し使用していたのが原因で、4ヵ月間に24名がAcinetobactorによる菌血症などを生じた例を紹介している。
本例では肺炎を発症した患者は少なかったので,感染経路は経気道よりもほかの経路があげられている。
すなわち、汚染した噴霧液を浴びた患者の皮膚に Acinetobactor が付着し、これがカテーテルを通して血中にはいったか、または看護婦詰所で使用の加湿器による静注セットや輸液の汚染を推定している。また、汚染した超音波加湿器は、健常人に対しても、発熱と倦怠感を主症状とする “humidifier fever” (加湿器熱)を惹起することが知られている。
 超音波加湿器は洗浄が十分に行えないので汚れやすく、容易に微生物汚染を受ける。それゆえ、アメリカCDCでは病院内での超音波加湿器の使用を禁止している1)。
したがって、わが国でも病院内では超音波加湿器は用いないのが望ましいと思われるが、使用する場合には12時間ごとの洗浄が必要である。
  1)Simmons,B.P.&Wong,E.S.:Infect.Control.3: 327-333,1982.
  2)Craven, D.E. et al.: Infect.Control.5: 353-355,1984.
                 .・   3)Reinhardt,D・J. et al.: J.Clin.Microbior.12:199-204,1980.
  4)Reinhardt,D・J. et al.: Dev.ind.Micrabiol.19:377-384. 1978.
  5)Lowbury,E.J.L.et al.:Control of Hospital lnfection 2-ed. Chapman and Hall,London,1981s p. 91.
  6)Smith,P.W.&Massanari,M.:JAMA.237:795-797,1977.
 (尾屋重治,神代 昭/山口大学医学部附属病院薬  医学のあゆみ 141.p27 1987)

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