赤ちゃんのうんちの色
離乳開始以前の生後2〜3ヶ月以内の乳児の便が黄金色であるのは、胆汁の色素成分であるビリルビン(黄色い色素)が、腸内細菌叢が未発達なため、ウロビリノーゲン(無色)への還元を受けることがほとんどなく、そのまま便の中に多量に含まれているためです。時に緑色調を帯びることがありますが(特にしばらく空気中に放置しておいた場合なと゛)、これはビリルビンが酸化され、ビリベルジン(少量で強い暗緑色を呈する色素)に変化したためです。抗生剤を内服した場合も緑便がみられることがありますが、これも腸内細菌叢が抑制されるためです。またビリルビンの酸化は便が酸性の時に起こりやすくなります。
離乳開始後になると、便の色調は黄褐色や暗褐色の褐色調の強い色彩に変わってきます。その時の便にはビリルビンはほとんど含まれていません。これは腸内細菌叢が発達し、それらによりビリルビンが還元され無色のウロビリノーゲン(l‐ウロビリノーゲン、i‐ウロビリノーゲン、d‐ウロビリノーゲン)となり、ついで自家酸化でウロビリン(l‐ウロビリンは橙黄色、i‐ウロビリンは緑色、d‐ウロビリンは橙黄色)となるためです。
黄色便か緑色便かは、母乳では、黄色便が89%(濃黄色63%、淡黄色26%)と多く、緑色便は8%(緑色1%、黄緑色7%)と少ないようです。ミルクでは、黄色便が25%(濃黄色12%、淡黄色13%)と少なく、緑色便は73%(緑色32%、黄緑色41%)と多いようです。灰白色便は母乳、ミルクともに1%程度にみられます。
以上から緑色便は、新生児期、抗生剤内服時などでみられますが、人工栄養児でもよくみられますし、母乳栄養児でも時にみられます。全乳人工乳使用時では異常と考えられた緑便も、母乳化した調整粉乳使用時には特に異常と考える必要はありません。便の性状異常(水様、粘液・血液を混じている場合など)を伴った緑便は注意する必要があります。消化不良症では緑便をみることは事実ですが、逆に緑便が消化不良を意味しないことが圧倒的に多いと考えられます。
白色便は、閉塞性黄疸を呈する疾患(胆道閉鎖症、乳児肝炎など)、脂肪吸収障害を呈する疾患(膵臓疾患、吸収不良症候群、肝・胆道疾患など)、腸管感染症(ウイルス感染症:ロタウィルス、ノロウイルス、アデノウイルス 細菌感染症:コレラ、大腸菌 真菌感染症:クリプトスポリジウムなど)などでみられます。ただし、閉塞性黄疸疾患などでは当然黄疸がみられること、脂肪吸収障害を呈する疾患では、便は光沢のある薄い色調の便であり、体重増加不良などの他の症状がみられること、腸管感染症では腹痛、下痢などの消化器症状がみられるため、全身状態が良好な場合には、これらの疾患を今回の原因として考えることはできません。
腸管感染症の中でも細菌感染症に罹患すると便の色が緑色になってきます。あるいはこれに血液が混じり、濃い緑色になることもあります。しかし、赤ちゃんはあまり細菌感染症にかかることはあまりないのでこれはあまり考えなくて良いと思います。
便の色を決めている(ビリルビン代謝に影響を及ぼす)重要な因子として、腸内細菌叢がありますが、それはさまざまな因子により影響を受け、日々刻々変化しています。
http://www.tochinavi.net/baby/b_kikaku/clinic/html/kamiyama/49.html よりあまりに良い説明なので引用させていただき、少し手を加えました。