胃食道逆流症


 胃食道逆流症とは、様々な原因により、胃酸ともに胃の中に入ったミルクや食べ物が食道に逆流して様々な症状を起こすことを言います。
逆流の程度が強い場合は、心拍数が低下したり(徐脈)、顔色が悪くなる(チアノーゼ)など強い症状を引き起こすことがあります。
このような症状や、肺炎や無呼吸発作を繰り返す場合、また嘔吐の回数が多く体重が増えない場合は、胃食道逆流症が疑われるため詳しい検査と治療が必要です。
よく嘔吐する、ミルクのあと食事のあとにゼーゼー痰が絡んだような音(喘鳴)がある、顔色が悪くなるなどの症状があれば早めに小児科医あるいは小児外科医に相談してください。

症状
 嘔吐、げっぷ、吐血などの消化器症状や咳・喘鳴・肺炎・無呼吸発作などの呼吸器症状を認めます。

診断
胃食道逆流症の検査には上部消化管造影、食道pHモニタリング、シンチグラフィー、食道内圧検査があり、これら複数の検査法を組み合わせて胃食道逆流症の診断をします。
1.上部消化管造影検査
食道と胃の形(胃の捻じれや食道裂孔ヘルニアの有無)、 造影剤の十二指腸への流れ具合や食道への逆流の状態や程度を確認します。
2.食道pHモニタリング ・食道インピーダンス検査
微小電極を用いて食道内のpHや電気抵抗を電子メモリ内蔵の携帯式小型機器に持続的に記録し、胃酸の逆流や食道の蠕動を評価する方法です。
3.食道内圧検査
逆流防止に重要な食道内圧を測定し、胃食道逆流症を運動機能の面から評価します。
4.食道内視鏡検査・生検
胃食道逆流症に伴う逆流性食道炎の診断に有用ですが、小児における評価基準がまだ確立されていないことと、全身麻酔を要することから本症の診断では一般的ではありません。

治療
 胃食道逆流症の治療には内科的治療と外科的治療があります。ただし赤ちゃん(新生児・乳児)では哺乳後に吐くこと(溢乳)は珍しくありません。無症状で逆流するだけの胃食道逆流現象は新生児・乳児ではよくみられる生理的なものであり年齢とともに軽快します。
1.生活指導
乳児ではミルクを飲んだあとのおくび(げっぷ)を十分に行い、だっこの姿勢を立て抱きに保持する(体位療法)ようにします。また、綿棒などによる肛門刺激や浣腸で排便・排ガスを促します。年長児では便通を整え、運動を行うことが有効です。
2.経口摂取の工夫
ミルクや食事は一回量を少なめにして、頻回に摂取するようにします。増粘ミルクは普段のミルクに市販の粉末タイプの増粘剤を加えて代用します。
3.薬物療法
胃酸分泌抑制剤(H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬)や胃蠕動促進薬(六君子湯やガスモチンなど)を内服することで、胃酸が逆流により引き起こすダメージを防ぎ、相対的な逆流を軽減させます。
4.手術による治療
内科的治療を行ってもなお症状が続く場合や生命を脅かす症状がある場合、外科的治療の対象となります。手術法は逆流防止手術の噴門形成術が一般的です。胃瘻造設術を同時に行うことがあります。術式にはNissen法、Toupet法、Dor法などがありますが、各施設や医師により選択する術式が異なります。また患児によって適切な術式が異なります。

 近年、腹腔鏡を用いて小さな傷で行うことができ、拡大視効果により食道周囲の温存すべき神経などを確認しながら低侵襲に手術を行うことが可能となっています。
 手術の合併症としては食道穿孔による縦隔炎、締めすぎによる嚥下障害・腹満の増強(gas bloat症候群)、迷走神経のダメージによる消化管蠕動低下などがあります。
 治療については医師と十分相談して手術の適応とタイミング・方法を決定しましょう。

★なかなか乳幼児で嘔吐を繰り返す子どもがかなりいます。嘔吐の程度、量、回数、吐き方が重要です。体重の増えをきちんと見て、まずはゲップをしっかりさせ、体位を工夫してなおかつ嘔吐が頻繁で 体重が増えないときには小児外科の先生にご相談します。意外にゲップなどがきちんとできるようになると嘔吐は減ることが多いです。体位も重要ですね。
幽門狭窄症は非常に重要ですが、わかりにくいことがあります。

(文献 The Japanese Society of Pediatric Surgeons 日本小児外科学会 ホームページ)


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