軟骨無形成症 achondroplasia
軟骨無形成症とは
最も頻度の高い四肢短縮型低身長をきたす骨系統疾患です。約1万人に1人、遺伝形式は常染色体優性遺伝ですが、90%以上は突然変異による散発例です。
原因
4番染色体長腕 4p16.3に存在する線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)の膜貫通領域における点変異であることが明らかにされています。 FGFR3は主に成長軟骨板に強く発現し、軟骨細胞の増殖・分化に対して抑制的に作用しています。しかし本症では先に述べた変異があるためにFGFR3が常時活性化され、軟骨細胞の分化が進行し、軟骨内骨化によって成長する長管骨の長軸方向への成長が著しく障害されます。一方、膜性骨化は障害されないため本症に特有な骨変形が出現することになります。 症状
出生時より明らかな四肢短縮を認め、本症と診断されることが多いです。乳児早期より低身長は明らかとなり、次第に著明な低身長を呈するようになります。頭部は相対的に大きく、前頭部突出、鼻根部陥凹、顔面中央部の低形成、下顎突出が見られ、特異な顔貌となります。
四肢は体幹に比し著明に短縮し、三尖手(第2,3指および4,5指がそれぞれ接近して一群となる)が見られます。歩行するようになると腰部前弯が著明となり、臀部を後方に突出した歩き方をするようになります。
頭蓋底の低形成のために中耳炎を合併しやすく、難聴の原因となることがあります。また、鼻閉、いびき、睡眠時無呼吸などの呼吸障害がみられることがあります。
思春期のスパートはほとんどみられず、最終身長は男児で約131cm、女子で約121cm程度と極端な低身長となります。
本症の合併症として頭蓋底の低形成のために大孔狭窄をきたし、しばしば水頭症がみられます。高度の水頭症に対しては脳室腹腔シャントが必要となります。さらに大孔狭窄による圧迫が強いと、延髄圧迫による呼吸障害や蘂レなどの神経障害がみられ、減圧手術の適応になることがあります。発症すると脊髄や神経根を圧迫し、腰痛や下肢の疼痛が出現し、進行すると対麻痺になることもあります。進行例では除圧術が行われることもあります。頭部MRIによる注意深い経過観察が必要です。
診断
特徴的な顔貌や身体所見およびX線所見などから診断は比較的容易ですが、新生児期などで紛らわしい場合やほかの疾患が疑われる場合は遺伝子診断が必要となることもあります。
X線所見
@頭部 大きな頭蓋冠、前頭部の突出、顔面骨の低形成、鼻根部の陥凹、下顎の突出、頭蓋底の短縮、大孔狭窄がみられます。
A脊椎 腰椎部正面贈での椎弓根間距離の短縮、側面像で腰椎後縁は前方に陥凹し、小弾丸状となります。
B長管骨 長径が短縮し短く太く見えます。骨端線のcuppingがみられます。
C骨盤 シャンパングラス様の小骨盤、アフリカ象の耳状といわれる小さく方形の長骨翼を呈します。
治療
1.骨端線閉鎖を伴わないものではGH(成長ホルモン)による治療が可能です。
この場合、診断の確定、身長が同性、同年齢で-3SD以下であること、手術などを考慮するほどの水頭症、大孔狭窄、脊柱管狭窄などの合併症を認めないことが重要です。
2.脚延長術 長管骨の骨幹部を骨切りし形成された化骨を創外固定器を用いて少しずつ伸ばす化骨延長法が行われます。理論的には10cm以上の脚延長が可能ですが、半年〜1年の治療期間が必要です。