アタマジラミ
アタマジラミは人にのみ寄生する3種のシラミの1種(他にケジラミ、コロモジラミ)です。頭髪に寄生します。
成虫は2〜4ミリ、灰褐色、3対の鉤状の脚で頭髪にしがみつき、頭皮にくっついて吸血します。
雌成虫は頭髪に卵を産み付け、卵は7〜10日で孵化します。
孵化後、幼虫は3回脱皮し、1〜2週間で成虫になり約1ヶ月間生きます。
卵の抜け殻はそのまま頭髪にくっついています。生きた卵は頭皮から6ミリ以内にあり、それ以上遠位にあるものは抜け殻です。
主な感染経路は頭髪と頭髪の直接接触によりますが、成虫は頭皮から離脱後も72時間生存し、寝具やタオル、防止、櫛、マフラーなどから間接的にも感染します。フェノトリン含有撒布剤(スミスリンパウダー、シャンプー)がでてからは減少していましたが、また増加傾向にあるようです。
症状
吸血部位のかゆみ。注入されるアタマジラミの唾液に対するアレルギーによるものです。
白いフケのように見える卵、あるいは抜け殻。側頭部、後頭部に多い傾向があります。取ろうとしてもなかなか取れません。
これを顕微鏡で見ればすぐ分かります。虫体は素早いので見つけにくいです。
幼児では頭髪や睫毛に寄生するケジラミと鑑別する必要があります。ケジラミは1〜2ミリと小さいです。
卵と鑑別する必要のあるものに「ヘアキャスト」があります。ヘアキャストとは毛髪をとり巻くように付着した鞘状、あるいはリング状のフケのことで、大きさや色合いが毛髪に固着したアタマジラミの卵と類似しています。
頭皮に軽い湿疹病変があると小さなフケやヘアキャストを生じやすいため、アタマジラミの卵と区別することが重要です。顕微鏡で鑑別できます。 治療
保険処方薬はありません。市販のフェノトリン含有撒布剤(スミスリンパウダー、シャンプー)を3〜4日に1回、4回繰り返します。これを頭髪の隅々まで見て観察し、見つかればもう一度繰り返します。
近年、フェノトリンに対して耐性種が増加しつつあるようです。
髪を水で濡らしたり、ベビーオイルやクリームリンスを浸透させ、スミスリンの付属物目の細かい櫛で丁寧にすくと、虫体、虫卵が取れてくるということです。 通常の洗髪とブラッシングではシラミの予防効果はありません。
衣類は通常の洗濯では殺虫効果はなく、55゜C以上の熱風やお湯で5分間処理すると卵、虫体ともに死滅します。衣類用の乾燥機利用は効果的。
衣類、シーツ、枕カバーは洗濯した後、乾燥機にかけます。乾燥機がなければ、3日以上使用せずにおいてから使いましょう。(3日間絶食させれば死滅します。)
家族にアタマジラミがいないかどうかチェックしましょう。
効果がない場合があるので、そのときにはすき櫛をしてこまめに虫体や虫卵をとるか、頭髪を剃毛することもあります。 予防
直接頭同士を接触させることで感染することが主な感染経路です。砂遊び、集団昼寝、家庭での添い寝キャンプなどでの感染が多いです。
プールや浴槽の水では感染しません。タオルの共有はしないようにしましょう。
帽子、マフラー、フード付き上着、ヘルメット、タオル、櫛、ヘアブラシ、タオルなど患児が使ったものを共有しないようにしましょう。
院長通信
顕微鏡の卵をお母さんに見せるとみんな一様に唖然とされます。僕はその卵の形の美しさに時に感動することがあります。中に孵化前の幼虫がいることがあります。心臓の鼓動が見えます。
先日お母さんが虫を捕まえてきました。捕まえることもできるんですね。
スミスリンは値段が高いので、処方薬にして頂けると皆さん助かりますね。
(文献 53)