B型肝炎


B型肝炎はB型肝炎ウイルスの感染によって、肝細胞が傷害される病気です。

原因
B型肝炎は血液を介しての感染がほとんどです。小児においては分娩時に新生児の粘膜や皮膚の傷から母親の血液が付いて感染する経胎盤感染が問題になります。このように母と子の間で分娩時に感染することを垂直感染と言います。

症状
全身がだるくなり、食欲不振、嘔気、嘔吐、発熱、腹痛などが出現します。
小児の場合、無症状のまま、たまたま血液検査をしたときに発見されることがあります。
黄疸が出て初めて分かることもあります。
ほとんどの場合、病気の回復期に黄疸が出現してきます。

診断
肝機能検査を調べると異常が認められます。急性期にB型肝炎ウイルスの関連抗原が認められ、急性期後半から回復期にかけてB型肝炎ウイルスの抗体がみられます。

治療
@安静
A食事療法(高蛋白食、低脂肪食)
B輸液など。
以上のような対症療法で、良くなるのを待ちます。

経過
だいたいは自然に治りますが、慢性化する傾向がかなりあります。
慢性化すると、肝硬変、肝ガンが発症してくる可能性があります。まれに劇症肝炎という状態になり、死亡することもあります。

予防
@母子垂直感染の予防(公費負担)
 母がHBs抗原陽性、HBe抗原陽性 児の臍帯血HBs抗原陰性 または陽性の場合でも児のHBs抗原陰性の場合は出生直後の赤ちゃんにHBグロブリンの筋注とHBワクチンを行います。その後ワクチンを2回追加します。これにより約90%以上のこどもたちがキャリアになるのを予防することができます。
キャリアとはウイルスをもっていて、症状がない状態のことです。いずれ発症して慢性肝炎となることが多いのです。キャリアの母親は子どもに垂直感染によって、子どもにウイルスを伝えていきます。赤ちゃんは分娩時など小さいときにウイルスをもらうと発症しないまま体の中にウイルスをもったまま成長し、キャリアとしてまた、次世代にウイルスを伝えていきます。しかしグロブリンとワクチンによって、この連鎖を断ち切ることができるのです。
これによってB型肝炎の激減につながると考えられています。
A血液を介して感染しますので、患者さんの血液をきちんと監理することが大切です。病院では看護婦さんや医療従事者が感染する事故にあっています。感染しないように針などを扱うときに注意をしなければなりません。感染する機会の多い人は感染予防にワクチンをしておく必要があります。
両親などB型肝炎にかかっている人がいる場合にはワクチンをしておく方がいいでしょう。

HBウイルスの感染力について
 HBe抗原陽性キャリアの血液が主たる感染源である。唾液など分泌液も混在する血液のため感染源になる可能性がありますが,ウイルス量がはるかに少ないこと,その侵入は粘膜に傷のあるときに限られ,注射の形で直接注入されるものではないことなどから,実際に感染を生じる例は夫婦,親子など濃厚接触のあるときに限られています。

1)注意すべきこと
 母乳も自由に与えて良いが自分の子供以外には与えないように指導します。キャリアの母親が口で噛みつぶした食べ物を児に与えることも控えさせましょう。かみそり(替刃,電動式も含む),歯ブラシなどは極微量の血液が付着し,それを押し込む可能性があるので共用は禁止します。鼻血,外傷や月経血などはきれいに拭きとり,それを自分の手で,最終処理である焼却あるいはトイレに捨てるところまで責任を持たせましょう。皮膚に付着した血液は流水でよく洗い流します。便所や下水に落ちたHBウイルスは直ちに失活化されます。出血時の処置は,患者が小さい子供であっても自ら終わりまで処理できるように繰り返して教えます。幼児であっても他人を噛んだり,唾をかけたりしないこともよく教えこめば出来るようになります。

2)日常生活上での注意
 患者の使ったコップ,皿,箸など食器類はそのまま普通に皆のものと一緒に洗えばいいです。血液が付着したのもまず流水で洗い,後は普通のルートにのせます。これは家庭でも病院でも同様です。
患者だけにデイスポの食器を使うことはそれだけで差別とみなされる恐れがあります。医療従事者や学校の教師などには,児を特別扱いすることが,児の精神的な発育を歪めることも厳重に注意すべきであります。同じコップで飲み,食べることのないよう,患者自体にはよく教え込む必要はありますが,まちがって共用したとしてもこの程度では感染の恐れはありません。もちろん風呂,便座,寝具,衣服などから感染する可能性は全くありません。
 手や皮膚などに付着した血液を洗う場合,ウイルスの希釈を繰り返す意味で必ず流水(水道の水を出しっ放しにして)で洗う。洗面器など貯めた水で洗うのは希釈効果は不十分ですのでさせないようにします。

家族内感染
 配偶者やセックスパートナーには,接触の始まつた初期の段階で感染を生じることが多く,一過性感染で抗体を獲得し,キャリアになることはありません。一応検査をしておき、陰性ならワクチンをすすめます。

※B型急性肝炎を発症した場合,欧米に多いゲノタイプAでは慢性化する率が高いとのことです。わが国に多いゲノタイプC(ゲノタイプBも含む)は慢性化は低いようです。
わが国のB型肝炎は従来ゲノタイプCが大半を占めていましたが,水平感染によるゲノタイプAが増加しています。ゲノタイプAは急性肝炎発病後,高ウイルス量の期間が長く,遷延化・持続感染化の確率が他のゲノタイプより高くなります。成人初感染例の約7〜8%で急性肝炎後にキャリア化することが知られており,ほとんど慢性化しないゲノタイプCとは区別する必要があります。
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