Hunter症候群


Hunter症候群とは
Hunter症候群はムコ多糖症U型であり、ムコ多糖分解酵素活性の欠損または低下によって、結合織を中心とした全身の諸臓器に不完全に分解されたムコ多糖が蓄積することにより、様々な症状を呈する遺伝性代謝異常症です。ムコ多糖症の中では唯一、X染色体劣性遺伝を示し、出生男児の11〜13万人に1人発症すると報告されています。

原因
X染色体短腕(Xq28)に位置する、リゾゾーム加水分解酵素の一つであるイズロネート−2-スルファターゼ(iduronate-2-sulfatase:IDS) 遺伝子の異常です。
遺伝子異常には点突然変異から欠失まであり、genotypeの多様性がphenotypeの多様性を反映していると考えられています。

症状
特有なガーゴイル顔貌(大頭(頭のサイズが大きいこと)、前額突出、低い鼻梁、広がった鼻翼、眼間開離(眼の間が広い)、内眼角贅皮(眼の内側に眼瞼部皮膚が被さるようになっていること)、幅広く厚い口唇)、がっしりとした太く短い躯幹・四肢、厚く張った皮膚、躯幹・四肢近位側に集まる小結節、多毛、異所性蒙古斑、関節の可動域制限、肝脾腫、心雑音、心弁膜の肥厚、心不全、精神発達遅滞、難聴などを起こしてきます。

診断
特徴的な顔貌や臨床症状と尿中ムコ多糖測定においてヘパラン硫酸、デルマタン硫酸の尿中異常排泄が認められ、確定診断にはイズロネート−2-スルファターゼの測定を行い、診断を確定させます。

治療
1.骨髄移植
  肝脾腫、関節拘縮、呼吸障害、皮膚の柔軟性は改善されることが期待されます。中枢神経や骨病変には無効とされていますが、精神発達遅滞の現われない軽症型では勧められています。症状が進行する前の早期治療でHLA一致同胞からの移植が望ましいとされています。
2.酵素補充療法
  2007年11月より合成酵素補充療法が承認され、治療が始められています。
3.遺伝子治療
  米国では試みられています。

予後
重症では発育障害、精神発達遅滞、中枢神経変性を伴い、急速に進行し10〜15年で死亡します。
主な死因は閉塞性呼吸障害、心臓弁障害、心筋肥大、肺高血圧症、冠動脈狭小化による心不全などです。
軽症例では精神発達遅滞もなく、60歳くらいまで生存することもあります。

文献 59


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