Hurler症候群


Hurler症候群とは
Hurler症候群はムコ多糖症T型であり、ムコ多糖分解酵素活性の欠損または低下によって、結合織を中心とした全身の諸臓器に不完全に分解されたムコ多糖(GAG:グルコサミノグリカン)が全身に蓄積することにより、様々な症状を呈する常染色体劣性遺伝疾患です。出生男児の約39万人に1人発症すると報告されています。

原因
GAGのうちデルマタン硫酸・ヘパラン硫酸がa-L-イズロニダーゼの機能不全により、分解されず全身に過剰蓄積されます。デルマタン硫酸の過剰蓄積は皮膚の肥厚、心弁膜症・骨形成不全に、ヘパラン硫酸の過剰蓄積は精神発達遅滞に主に関与するとされています。

症状
特有なガーゴイル顔貌(大頭(頭のサイズが大きいこと)、水頭症、精神運動発達遅滞、角膜混濁、滲出性中耳炎、難聴、閉塞性呼吸障害、前額突出、低い鼻梁、広がった鼻翼、眼間開離(眼の間が広い)、内眼角贅皮(眼の内側に眼瞼部皮膚が被さるようになっていること)、幅広く厚い口唇 、がっしりとした太く短い躯幹・四肢、厚く張った皮膚、躯幹・四肢近位側に集まる小結節、多毛、異所性蒙古斑、低身長、環軸椎亜脱臼、骨変形、関節の可動域制限、肝脾腫、心雑音、心弁膜の肥厚、心不全、精神発達遅滞、難聴などを起こしてきます。
重症型では6ヶ月頃、軽症型では5歳以降の発症が多いとされています。

診断
全身のX線所見で特徴的な多発性骨変形が見られます。特徴的な顔貌や臨床症状と尿中ウロン酸量、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸の尿中異常排泄が認められます。確定診断には白血球または培養皮膚線維芽細胞のa-L-イズロニダーゼ活性の測定を行い、有意な低下があれば診断が確定します。

治療
1.対症療法
  生命予後にかかわる心弁膜症、水頭症への対応していきます。
2.酵素補充療法
  a-L-イズロニダーゼの遺伝子組み換え製剤ラロニダーゼ(アウドラザイム)の定期的な点滴静注(週1回)により、尿中GAG排泄が減少、肝脾腫、呼吸機能、関節可動域、歩行の改善が見られます。中枢神経系、角膜混濁、心弁膜症に対しては効果が乏しく、また生涯にわたり補充を継続する必要があります。
3.造血幹細胞移植
  中枢神経系への効果も期待でき、また、一度の移植が成功すれば効果は持続しますが、正着不全や移植片対宿主病などの重篤な副作用を起こすことがあり、適応は限定されます。HLA一致同胞またはHLA6/6一致の臍帯血、移植時16ヶ月未満、発達指数(DQ)/IQ>85が推奨されています。

予後
 重症例では根治的治療を行わなかった例は20歳前の死亡が多いとされますが、近年の治療の進歩により生命予後は大幅に改善されつつあります。

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