ケトン性低血糖症


ケトン性低血糖症はインスリンが高い結果おこる低血糖症の場合以外の原因でおこる低血糖症です。低血糖症とは一般に乳児、幼児では血糖値が40mg/dl以下のものです。早朝空腹時、または感冒などの発熱がきっかけになりやすく、また、夕食を食べずに寝た次の日の朝、発症することが多いのです。1歳半くらいから見られます。男の子に多く、低出生体重児、または新生児期に何らかの問題があった子どもに多く見られる傾向があります。

症状
嘔吐を伴う朝(空腹時)の低血糖があり、このときけいれんを起こすことがあります。頻回に吐きます。ぐったりして元気がなく、顔面は蒼白になります。普通の状態のときには血糖は異常ありません。知能の遅れはありませんが、身体的な発育は少し遅れたり、体重の増加がよくない子どもが多く見られます。低血糖があり、尿検査をすると尿の中にケトン体という物質がたくさん出てきます。

診断
低血糖があり、尿検査でケトン体が陽性で他に原因が考えられない場合、12〜18時間の絶食検査を行い、低血糖が出現する場合、診断します。

治療
ブドウ糖の輸液を行います。ブドウ糖の静脈注射だけでもよくなることもあります。
予防のため早めに糖分をとります。

その他の注意
低血糖をおこさないようにするために、食事療法が必要です。
@炭水化物の多い食事を中心にして、脂肪の摂取量を減らします。
A空腹にならないように食事の回数を増やします。
B疲労、食欲不振、かぜなどのときには少し元気がないなどの症状がでてきたときにはブドウ糖など早めに取ることにしておきましょう。
C食事を抜かないようにします。疲労が重なって夕食を摂らないことは避けましょう。また、起床時間が遅くなり朝食が遅くならないようにしましょう。
D家のことや行事などでストレスが貯まらないようにしましょう。
E感染症などで食べられないときでもブドウ糖など糖分をできるだけ取らせましょう。
F先生と相談して、尿のケトン体をチェックできるテープを購入して元気のない時にはチェックしてケトンが出ていれば糖分を早めにとらせましょう。(尿の一般検尿の検査テープです。)
規則正しい生活をすることが大切です。

将来のこと
10歳前後にはだいたい症状も出なくなります。予後は良いようです。予防に努めていればいつの間にかなくなっていくようです。

(更新 2002.6 文献 20)
追加の解説
飢餓時の反応
血糖維持のために、まず肝臓のグリコーゲンが動員されますが、小児では貯蔵量が少なく、血糖維持は4〜6時間が限度とされています(成人では6〜12時間)。グリコーゲンが枯渇すると糖新生がはじまります。その供給源は骨格筋由来アミノ酸(アラニン)、乳酸、脂肪などです。肝臓にて脂肪をβ酸化し、エネルギー(NADH2+)を産生し、糖新生を行ってブドウ糖を供給します。β酸化亢進によってできた余分なアセチルCoAはケトン体(アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸)に変換されます。筋肉(心筋、骨格筋)、脳、腎、副腎などでケトンは利用されますが、余剰のケトンは血中に増加していきます。また、糖新生には骨格筋由来の糖原性アミノ酸(アラニン)やオキサロ酢酸の炭素骨格が用いられます。したがって、筋肉量の少ない小児は糖新生が十分でなく、低血糖を来しやすいのです。また、ビタミン(B1、B2、ビオチン)の不足も糖新生が十分に行われず、ケトン性低血糖の発症の原因になりやすいのです。ただし、小児は空腹が続くとアセトン血症を来しやすいので、感染症の場合などでも尿ケトン陽性になることが珍しくありません。(文献 47 P 295)
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