先天性色素細胞母斑
色素細胞(メラニン色素産生細胞)の胎生期における皮膚への過剰分布あるいは胎児皮膚での過剰増殖によって生じます。
母斑細胞(色素細胞)の増殖が表皮から真皮内、時に皮下にまで見られます。
症状
1)生下時より存在します
2)黒褐色の、盛り上がらない斑状病変ないし軽度扁平に隆起し、表面がわずかに乳頭状〜顆粒状を呈する局面状皮疹としてみられます。大きさは成人期の病変のサイズによって、小型、中型、大型と分けます。
成人期での大きさは新生児期での大きさを頭頸部では1.5倍、その他の部位では3倍することで換算します。
3)頻度は小型で新生児100人に1〜2人、中型は1000人に1人、大型は50万に1人程度といわれています。
病理組織学的には
@表在型:母斑細胞が表皮・真皮境界部から真皮乳頭層に限局されるものです。
A表在・深在型:母斑細胞が表在型の部位に加え、真皮網:状層の付属器周囲や血管周囲などにも認められるものです。
B深在型:真皮全層から時に皮下にまで多数の母斑細胞がびまん性に存在するものです。
先天性色素性母斑は悪性黒色腫の発生母地となりえます。そのリスクは母斑のサイズが大きいほど高いといわれています。その生じる危険性は一生のうち大型の母斑で5〜10%といわれています。
中型以降では悪性黒色腫へのリスクは非常に少ないとされています。
大型の先天性色素性母斑は神経皮膚黒色症の合併に注意が必要です。
治療
1)大型のものは幼児期から悪性黒色腫発生のリスクがあるので、慎重な経過観察を必要とします。
2)大型のものは完全除去は不可能のことが多いです。獣皮様母斑からは悪性黒色腫の生ずる可能性がありますので、早期に切除、植皮をします。
3)小・中型のものは部位や患者の希望を考慮し、思春期頃をめどに切除します。
4)小・中型のものはレーザー治療も一定の有効性があります。
類縁疾患
神経皮膚黒色症
後頭〜項部や背部に出現する大型の先天性色素母斑細胞母斑で、脳脊髄軟膜にも母斑細胞の増殖を伴うものです。
軟膜にも色素細胞の増殖や悪性化によって髄液通過障害や神経症状などを呈すると死亡率が80%と高く、予後不良です。
後天的に出てくる単純性黒子(ほくろ)
数ミリ以下の比較的小さなもので、褐色〜黒褐色を呈し、類円形〜不整形で皮膚面と同じ高さのものとやや厚みがあり、扁平隆起するもの、ドーム状に隆起するものがあります。
丘疹状のものは3〜4歳頃から生えてくることがあります。 巨大色素性母斑(獣皮母斑)
出生時より5p以上ある巨大なものをこのように呼びます。将来悪性黒色腫の発生母地となる懸念があります。巨大色素性母斑があり、脳、神経系にもメラノーシス(メラニンの増加)を伴い場合を神経皮膚黒色症といい、神経系のメラノサイトからの悪性黒色腫発生の可能性もあります。
脳神経症状として脳圧亢進症状(頭痛、嘔吐)、二次性の水頭症、てんかんなどを伴います。
Peutz-Jegers症候群
亢進に黒子様の小黒色班が多発する場合、口腔粘膜、四肢末端の色素斑と、消化管ポリポージスをきたす疾患です。常染色体優性遺伝ですが、半数は弧発例です。
LEOPARD症候群
黒子が全身に数百個と多発するもので、汎発黒子症(LEOPARD症候群)といいます。出生時より黒子が多く、思春期まで増加します。
点状集簇性母斑
淡褐色斑状に黒子が多数集まって出ているものをいいます。欧米ではこれを扁平母斑といっています。また、上下の眼瞼にまたがっているものを分離母斑といいます。
サットン母斑
黒子の周囲がの皮膚の色が抜けて白斑に取り囲まれた様になることがあり、これをサットン母斑と呼びます。
(文献 49 p32 66)