母斑細胞母斑
神経櫛に由来すると考えられる母斑細胞が種々の程度に集まって存在している形成異常を母斑細胞母斑といい、一部の母斑細胞はメラニン顆粒を持っているので一般に黒色色調を呈します。
母斑細胞の存在する部位によって
1)接合部母斑(表皮内下層に活性のある母斑細胞が存在する)
2)複合母斑(接合部母斑のほかに真皮内に母斑細胞の巣がある)
3)真皮内母斑(母斑組織は真皮内にのみに存在する)
に分けられます。
小児の母斑細胞母斑の多くは複合母斑であり、手掌、足蹠および外陰部のものは一般に接合部型母斑です。なお成人の母斑細胞母斑は真皮内母斑が大部分です。
症状
1)生下時より存在します
2)大きさは粟粒くらいの小さなものから手掌大以上まで様々です。
3)ほとんど隆起しないもの(接合部母斑)から半球状のもの(真皮内母斑)まで様々です。
ただし小児では複合母斑が多いので、扁平隆起が多いです。年長児では次第に盛り上がってきます。
4)形は楕円形がやや多いが、不整形のものもあります。
5)色はメラニンの量に従って褐色から黒色までさまざまです。
6)辺縁は鮮明ですが、時に一部不明瞭。
病型
1.有毛性母斑
病巣の大部分に濃い毛があるものを有毛性母斑と言います。特に広範囲の皮膚にこのような変化があるときには獣皮様母斑とよばれています。
獣皮様母斑は臀部、下腹部に大きな病巣があり、あたかも黒いパンツをはいている様な感を与えます。
それを中心として、体幹、四肢に種々の大きさの病巣が散在していることが多いようです。
広範囲の獣皮様母斑では同時に中枢神経系、特に脳軟膜にも病巣があり、、脳水腫を合併したり、脳波に異常が見られることがあります。
2.点状集蔟性母斑
淡い褐色の扁平母斑のなかに点状に母斑細胞母斑が存在している状態です。
Sutton母斑
類円形の白斑の中央に母斑細胞母斑があるもの、halo nevus ともいいます。数は1個よりも複数のことが多く、また体の他の部分に尋常性白斑を合併することがあります。母斑細胞母斑の周囲に白斑ができるのはメラノサイトに対する免疫反応と考えられています。母斑細胞母斑のほかに、悪性腫瘍の転移巣や青色母斑の周囲にも白斑を生ずることがあり、一般にSutton現象と呼ばれています。
3.若年性黒色腫
複合母斑の特殊なタイプでです。組織学的には悪性黒色腫に似ていますが、これとは全く関係なく、臨床的には良性です。乳幼児の顔面に好発します。
1)大きさは1cm以下。
2)ほぼ半球状に盛り上がります。表面平滑、やや堅い腫瘤(小児の複合母斑より隆起が著しい)
3)色は赤みを帯びた淡褐色のものが多いです。(小児の場合、母斑は黒色調が多い)
4)表面に毛細血管拡張があれば診断は容易となります。
治療
1)足蹠、四肢末端など外傷を受けやすい部分の接合部母斑は切除した方が良いです。
2)獣皮様母斑からは悪性黒色腫の生ずる可能性がありますので、早期に切除、植皮をします。
3)その他の母斑細胞母斑では美容的に問題がある場合には切除します。一部が残存すると再発することが多いです。
4)若年性黒色腫は診断を確かめるために切除します。.広範囲の手術は必要ないが、不完全な場合は再発します。
5)放射線治療は効果がありません。
(文献 14)