尋常性乾癬
尋常性乾癬とは
炎症性角化症に属する慢性の皮膚疾患で、遺伝的体質にさまざまな環境因子が加わって発症します。病態には不明な点が多いです。
病態として以下の特徴があります。
@表皮細胞の過増殖と表皮突起の延長
A不全角化を伴う過角化
B毛細血管の拡張と増生
C真皮乳頭の浮腫と炎症細胞浸潤
D好中球の角層下の浸潤
T細胞が抗原提示細胞(APC)によって活性化され、Th17/Tc1系あるいはTh17 系のT細胞が皮内に浸潤します。これらの細胞から放出される各種のサイトカインが、炎症をもたらしつつ表皮細胞や血管内皮細胞を増殖させ、乾癬の病像をつくっていくのです。
日本人の乾癬患者に占める小児の割合は低く、10歳未満の発症は5%程度です。
皮疹は寛解と増悪を繰り返して慢性に経過します。 診断
表面に鱗屑(りんせつ)が付着した境界明瞭な角化性紅斑局面です。
頭部のほか、機械的刺激のある、肘、膝、下腿伸側や腰背部に多く、点状陥凹など爪の変化もしばしば伴います。このときKobner現象といって機械的な刺激により、皮疹が誘発される現象が起ることが多いのです。これは正常に見える部位も皮疹の準備段階にあることを意味します。
かゆみは半数程度で軽度のことが多いようです。
病型はいろいろあり、局面の多発する尋常性乾癬が多いですが、小児では急性滴状乾癬の割合も多いとされています。
特殊なものに全身症状を伴う膿疱性乾癬があります。
小児の乾癬の特徴
成人に比べて女児の割合が多いです。(成人男女比2:1)
家族歴を持つ場合が多いです。
個疹が小型で、鱗屑や浸潤が少なく紅斑が主体のものが多いです。
上気道感染に続発する急性滴状乾癬の割合が多いです。
napkin psoriasis : 乳幼児の陰股ぶにおむつ皮膚炎に似た乾癬様皮疹を生じるものであくまでも形態学的な症候群です。多くは軽快しますが、一部の症例は典型的な乾癬に移行することがあります。
治療
軽症なら外用療法で治療します。重症な症例では内服など全身療法を行います。
外用療法
ステロイド外用剤 ビタミンD3外用剤 軽症〜中等症例に第一選択とします。副作用が少ない利点があります。
全身療法
免疫抑制剤 シクロスポリン、レチノイド製剤のエトレチナート(小児では骨端の早期閉鎖による成長障害の可能性があります。)
※シクロスポリン 主にT細胞に働き、IL-2などのサイトカインの産生を抑制することにより作用する。初期量3.0〜5.0mg/kg/日(分2)で開始。
症状の改善に合わせて0.5〜1.0mg/kg/日の漸減を行う。
副作用として 血圧上昇、腎機能障害
小児期のシクロスポリン療法では、薬物代謝が成人に比べて早いこと、薬剤の利用率が低いなどの特長を有するため、従来行われている1日2回内服ではなく、1日3回で行われる場合もある。 光線療法 PUVA療法 narrow band UVB などを行います。
長期ケアを必要としますが、感染することはなく合併症もありません。
※その他
急性適状乾癬
1〜2cmの角化性紅斑が体幹を中心に散在性に急激に発症します。その皮膚出現に先行して溶連菌による急性上気道炎を多くみられます。急性適状乾癬の発症は若年者に多い傾向があります。
一般予後良好な病型とされますが、一部の患者では尋常性乾癬に移行する例もあります。
Napkin psoriasis
乳幼児の陰部、股部におむつ皮膚炎様に皮疹が生じ、これに引き続いて数週間後におむつ周囲、および全身に乾癬様皮疹を多発するもので、2〜3ヶ月で軽快するといわれています。
(文献 58)