ウィルソン病 Wilson disease
ウイルソン病とは
常染色体劣性遺伝の形式を取る先天性銅代謝異常症です。
出生35000〜43000人に一人と推定され、発症年齢は3〜50歳とされています。ピークは10〜11歳と考えられています。
肝臓から胆汁中への銅の排泄障害です。また、肝細胞内におけるホロ型(活性型)セルロプラスミンの合成も障害されます。
肝臓に銅が蓄積します。また、肝臓から血液中にあふれた銅が、脳、角膜、腎臓に貯まり、様々な症状を引き起こします。
難病に指定されていますが、確立された治療法があり、早く見つけて治療すれば病気の進行を抑えられます。
発見が遅くなると命に関わることがありますので、注意していきましょう。 症状
一般的に3〜15歳位のときに肝機能障害や黄疸で眼球や皮膚が黄色くなるなどの肝臓の症状を起こして病気が発見されます。特に自覚症状はなく、血液検査でAST(GOT)、ALT(GPT)など肝機能が異常となります。
脳に銅が蓄積すると早い人では小学校高学年、多くは15〜16歳以降に現れます。
10歳代、20歳代では目立った症状が出ずに30〜50歳でウイルソン病と診断されることもあります。
ロレツが回らなくなったり、手足が震えたり、歩くのが不自由になるなどの症状が出ます。 精神状態が不安定になり、無気力になったり、うつ状態になったりする人もいます。構音障害、歩行障害、羽ばたき振戦、知覚障害など見られます。
目の症状として、角膜のまわりに銅が沈着して、青緑色や黒褐色になり、視力が低下することがあります。カイザー・フライシャー(Kayser-Fleischer)角膜輪と呼ばれ、特有の症状です。
診断
血液中のセルロプラスミンの量が減少、尿中に銅が増えます。セルロプラスミン値の低下や尿検査で銅の量(尿中銅排泄量)を量ります。眼下的検索も必要。
乳幼児期以後の急性、慢性の肝障害、および学童期以後の神経あるいは精神症状を見たときは、本症の可能性を考えます。 治療
病気に気づかず放置されれば、症状が次第に進行し、肝不全や神経障害で寝たきりになってしまいます。
投薬
1)銅と結合して尿中に排泄させる薬(キレート薬 D-ペニシラミン、塩酸トリエンチン)。症状の進行を抑えます。
2)銅の吸収阻害薬 亜鉛薬(酢酸亜鉛) 食事の中に含まれる銅の吸収を抑えます。
その他
できるだけ銅が多く含まれる食品の摂取を避け、低銅食を心がけることが重要です。銅を多く含む食品にはレバー、貝類、甲殻類、豆類、チョコレートなどがあります。
症状がそれほど出ていないときに治療を始めれば、症状の進行は抑えられ、学校生活、仕事、妊娠・出産、に支障が出ることはありません。
ただ、長期間、薬の服用を怠ると症状の再燃や悪化を生じたり、劇症肝炎を起こして死亡したりするケースがあるので注意が必要です。
ウイルソン病の人は銅の代謝の関わる「ATP7B遺伝子」に生まれつき異常があります。ウイルソン病の患者さんの兄弟姉妹が同じ病気である確率は25%です。患者さんに兄弟姉妹がいる場合は早めに検査しましょう。
内科的治療は生涯にわたって継続しなければなりません。良好な服薬コンプライアンスを保つことが本症の予後をよくするために極めて重要です。