抗インフルエンザ薬


タミフル
 インフルエンザウイルスが細胞から細胞へ感染、伝播していくためにはウイルスの表面に存在するノイラミニダーゼという酵素の作用が必要なのですが、この作用を阻害することによってインフルエンザウイルスの増殖を阻害する抗インフルエンザウイルス剤が開発されました。ノイラミニダーゼはA、B型に共通であることから、ノイラミニダーゼ阻害剤はA型、B型インフルエンザ両方に効果があります。

 さらにこれに加えて、平成13年2月より、経口薬であるリン酸オセルタミビル(タミフル)が使用できるようになりました。平成15年1月カプセル剤しかありませんでしたが、小児に対しても顆粒タイプを内服できるようになりました。
 これらは発症後40〜48時間以内に服用しないと効果がないとされており早めの診断、治療が必要となります。

 タミフル(オセルタミビル)
  1歳未満 3mg/kg 体重2kg 0.4g 3kg 0.6g 4kg 0.8 6kg 1.2g 8kg 1.6g 10kg 2.0g 12kg 2.4g
  1歳以上 2mg/kg 体重 9kg 1.2g 10kg 1.33g 12kg 1.6g 14kg 1.87g 16kg 2.13g 18kg 2.4g
    20kg 2.67g 22kg 2.93g 24kg 3.2g 26kg 3.47g 28kg 3.73g 30kg 4.00g
    32kg 4.27g 34kg 4.53g 36kg 4.67g 37.5kg 5.0g

     副作用は重篤なものはありませんが、腹痛、下痢、嘔気などが出ることがあります。行動異常が問題となっていますが、インフルエンザではそれ自体に不穏、興奮、精神症状をきたすことがあるので、この点は明らかになっていません。つまり報告されている年長児の行動異常についてははっきりとした見解はまだ出ておりません。
2007年になって2人の中学生(12歳、14歳)が高層マンションから飛び降りて亡くなりました。二人ともタミフルを飲んでいて因果関係が疑われていれています。
厚生労働省は認めたくないようで、インフルエンザの子どもはタミフルを飲む飲まないに関わらず、2日間は目を離さないようにと通達を出しました。

確かにインフルエンザでは異常行動や異常言動が見られます。タミフルと異常行動との因果関係は統計的にも明らかではないのですが、やはり実際使用するということになると、やはりためらいがちになります。全国で840万人というたくさんの人が内服した中で56人タミフルを内服後、亡くなっているということです。
 確かに頻度はかなり低いものです。さらに異常行動で亡くなっている子は4人と非常に少ないこと、最低年齢が12歳ということから10歳以下の子では注意しながら使っても良いのではないかと思います。

 実際に使用してみると、1〜2日以内にほとんどの場合、解熱します。効果は非常によい感じです。インフルエンザに多い、二峰性の発熱(一度下がってまた出る熱)も無く、経過はいいです。ただけだるさなどはなかなかとれないようです。熱が下がったと思っても、お薬を勝手に中止しないでください。ウイルスは熱が下がってもまだ排出していることが多いのです。
48時間を超えても効果はあるような印象です。

イナビル
イナビルは口から吸入する吸入型の薬です。
イナビルは容器に入った薬を1回分吸うだけでインフルエンザウイルスの増殖を抑えることができます。
10歳未満では20mg(1容器)を1回分として吸入のみ。
10歳以上では40mg(2容器)を1回分として吸入のみ。
吸入型のメリットとしてインフルエンザウイルスは喉や気管支で増殖します。吸入型のイナビルはウイルスが増殖する喉や気管支に直接届いてウイルスの増殖を抑えます。
投与開始に関する注意として治療に用いる場合は発症後、48時間以内に投与を開始します。
予防に用いる場合はインフルエンザ感染患者に接触後、48時間以内に投与を開始します(予防には主に吸入粉末剤を用いる)。

リレンザ
リレンザ(ザナミビル)もノイラミニダーゼを抑制します。抗ウイルス作用が抗原性変化によって影響されないよう、ノイラミニダーゼに冒された部位は保存されます。
1回 20BL 1日2回 1回2吸入のみ

インフルエンザの予防薬として、リレンザにはいくつかの長所があります。いったん吸入されると、リレンザは直ちに効果を発揮します。
ただし、予防したい場合、リレンザは感染を避けたい期間中、毎日使用する必要があります。

副作用はリレンザの使用における重篤なものは何も報告されていません。

臨床実験のでの効果
インフルエンザの季節に、偽薬を使うグループと対照させる無作為二重盲式実験が、2カ所で行われました。臨床実験に参加したのは合計1107名の患者で、患者の平均年齢は29歳でした。患者は4週間にわたって、リレンザあるいは偽薬のどちらかを1日10 mg吸入しました。実験では、「咳、頭痛、喉の痛み、筋の痛み、発熱、37.8度以上の体温」のうち2つ以上の症状が3日以上連続して記録された感染症を、インフルエンザと定義しました。この結果、リレンザは実験用に定義したインフルエンザを67%予防しました(信頼区間 [CI] 95%、39〜83%;有意水準 p<0.001)。また、発熱を伴うインフルエンザの予防に、84%効果があることがわかりました(信頼区間 [CI] 95%、55〜94%;有意水準 p<0.001)。リレンザを使用したグループにおいて、偽薬を使用したグループと異なる副作用は、まったく記録されませんでした。この研究の結果は、健康な成人におけるインフルエンザの予防に、リレンザが安全で効果的であることを証明しています。 リレンザは、疾病の期間を最大で2.5日、短縮します。
臨床実験では、リレンザは頭痛、喉の痛み、発熱、筋肉痛、咳、衰弱、食欲不振などの症状を著しく改善しました。リレンザの使用を開始してから48時間以内に症状は改善しました。
リレンザは、成人および12歳以上の子供のインフルエンザ感染の治療を目的としています。5才以上の子どもたちには十分使用できる薬剤として、期待されています。 インフルエンザの最初の徴候が現れてから48時間以内にリレンザによる治療を開始すると、最も効果的とされています。
リレンザは、グラクソ・ウェルカム社がインフルエンザの治療に開発した経口吸入抗原です。最近行われた研究では、リレンザは現在使われているインフルエンザワクチンの代わりとして、インフルエンザの予防に効果があると証明されています。グラクソ・ウェルカム社は、インフルエンザの予防という適応で、別に薬品認可申請を提出するとしています。

ゾフルーザ
新しく生産された抗インフルエンザ薬です。1回内服できちんと効果があります。副作用も少なく、24時間で感染力がなくなるということです。
現在は錠剤しかないのですが、10kgの体重の子どもから錠剤が内服できれば効果が期待できます。非常に小さい錠剤です。しかし、飲めなかったときには保険的には困ったことになるので5才くらい以下ではタミフルの方が良いと思います。

※ゾフルーザの働き
ゾフルーザはポリメラーゼ酸性蛋白質が持つウイルス特有のキャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を選択的に阻害して、宿主細胞のmRNA 前駆対のキャップ構造下流を切断できないようにします。その結果、ウイルスmRNA が合成をされなくなるため、ウイルスの増殖を抑制されます。

アマンタジン(シンメトレル)
塩酸アマンタジン 現在小児に使うことのできる唯一の抗インフルエンザ薬。インフルエンザAに対して効果あり。発病48時間以内でないと効果はない。急速に耐性を獲得するといわれている。(効かなくなるということ)
副作用:めまい、ふらつき、たちくらみ。
もともとパーキンソン病に対する薬で長期に投与された後、急に服用を中止すると悪性症候群という、重篤な副作用を起こす。

★効果はかなりみられますが、個人的にはあまり使いたくはない薬ではあります。今年(2001春)はB型が多いようで全く効果がみられないこともすくなくありません。

(リレンザについてはInhouse Pharmacy Japanのホームページより 一部改変)

2023.1.6更新
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