保湿剤
バリア機能と保湿機能などを有する物質です。保湿剤によって、両方あるいは一方を持っています。
バリア機能とは体内の水分の蒸散を防ぎ、外界からの刺激物質やアレルゲンの体内への侵入を防ぐ機能のことです。
保湿能とは湿度が低い環境下でも角層に水分を抱える能力を示します。
保湿剤は角質軟化作用、水分保持作用、バリア機能補強の作用がありますが、それぞれその機能のすべてを備えているわけではありません
日本皮膚科学会のガイドラインでは「乾燥およびバリア機能の低下を補完し,炎症の再燃を予防する目的でステロイドあるいはタクロリムスを含まない外用剤(保湿剤、保護剤など)でスキンケアを行う必要がある。」としています。
また、「軽微な皮膚症状に対しても外用療法を継続する必要があり、これを怠ると炎症が容易に再燃し,ステロイド外用剤やタクロリムス軟膏使用の意義の低下につながる」と書かれています。
小児のアトピー性皮膚炎ではドライスキン傾向が強いので、保湿剤の役割は非常に重要です。
ただ、良い皮膚の状態を維持するのには大切ですが、炎症を抑える作用はないので保湿剤だけを塗っても良くならないので注意が必要です。 白色ワセリン
油脂性皮膜で、皮膚に薄い皮膜を張り水分を角質層に密閉して蒸散を防ぐいわゆるエモリエント製剤といわれるものです。
皮膚がしめっている方がのびが良いため、入浴直後が最適です。
プロペトは精製ワセリンです。刺激感も少なく、安価です。べたべた感が強いです。 尿素
水分と結合して保湿効果を示すモイスチャライザーといわれるものです。
尿素は刺激作用があり傷や炎症があると痛みを感じることがありますので、小児には向かないといわれています。保湿効果は強いですが、バリア機能補強効果は乏しいです。べたつきは少ないです。
ウレパール、パスタロン ヘパリン類似物質
水分と結合して保湿効果を示すモイスチャライザーといわれるものです。
保湿効果は高く、べたべたせず塗りやすいです。まれに赤くなることがあります。
ヒルドイド ビーソフテン セラミドや天然保湿因子を含むものなど
皮膚の保湿機能を担う角質細胞間の脂質です。セラミドは三つの作用を満たしますが保険適用がありません。コストは高く、処方薬ではありません。
アズノール
カミツレの成分です。カミツレは南および東ヨーロッパ原産の菊科の植物で、古くから民間薬としていろいろな疾患に使用されています。
カミツレの有効成分アズレンは特有の七員環構造を持つ化合物で炎症組織に対する直接作用と、各種の起炎物質に対する抑制作用を有する抗炎症剤です。
アズノール軟膏はこのような抗炎症作用を有しているアズレンの一種グアイアズレン(ジメチルイソプロピルアズレン)を含有し、精製ラノリン、白色ワセリンを基剤とする軟膏剤で湿疹を始め、熱傷/その他の皮膚疾患によるびらんや潰瘍の治療に用いられています。口腔粘膜の傷などにも使えます。
びらん面に長く使うと、ラノリンによる接触性皮膚炎を起こすことがあります。 ※ワセリン、アズノールは保湿性が強いのか、とてもべちゃべちゃした感じで使い心地はあまり良くありません。ヘパリン類似物質、尿素製剤は塗り心地は良いです。 製剤について
◎乳液タイプはのびが良く、手軽に塗ることができますが、短時間で乾燥して効果が弱いので、乾燥が強い秋冬にはクリーム基剤のものやワセリンが良いでしょう。