宝厳院


宝厳院
大亀山宝厳院は臨済宗大本山天竜寺の塔頭寺院で寛政2年(1461)室町幕府の管領細川頼之により天竜寺開山無窓国師の第三世法孫聖仲永光禅士を開山に迎え創建された。創建時は京都市上京区にあり、広大な境内を有した寺院であった。応仁の乱で消失したが、再建され天正年間には豊臣秀吉より御朱印料三十二石を付与、徳川幕府も明治に至るまで、外護した由緒寺院である。その後、変遷を経て天竜寺塔頭弘源寺境内に移転の後、現在地(旧塔頭寺院跡)に移転再興された。

本堂には本尊 聖観世音菩薩、脇仏に三十三体の観世音菩薩、足利尊氏が信仰したと寺伝にある地蔵菩薩像が祀られており、西国三十三カ所巡りに等しいと伝えられている。

獅子吼の庭
この庭園は室町時代に中国に二度渡った禅僧策彦周良禅師によって作庭された名園で嵐山を巧みに取り入れた借景回遊式庭園である。「獅子吼」とは「仏が説教する」の意味で、庭園内を散策し、鳥の声、風の音を聴くことによって人生の真理、正道を肌で感じ心が大変癒される庭である。
庭園内には須弥山を現す築山、その前には人生を思わせる「苦海」(空池)が広がり、対岸には「雲上三尊石」があり海の中には「此岸」より「彼岸」にわたる舟石、仏の元にわたる獣石が配置されている。また策彦禅師が命名された「獅子岩」、「碧岩」や「響岩」といった巨岩を身近に観ることができる。回遊路の途中には「破岩の松」はが天に向かってまっすぐ生えているのを見ると「願心」の大切さを痛感する。
またこの庭園は江戸時代の名所名園を収録した「都林泉名勝図絵」(秋里離島著)にも掲載された名園中の名園である。
春は新緑、秋は紅葉と一年を通して目を楽しませてくれる。
門前には「嵐山羅漢」が祀られており、「羅漢」とは釈尊の弟子で崇高な修行者、「悟りを得た人」を意味する。「五百羅漢」を天下の景勝地・嵐山に建立することにより、人類の安心立命と嵐山の守護・景観保全を祈念するとともに有縁無縁の菩提を弔うものである。
無窓国師曰く「山水ニハ得失ナシ、得失ハ人ノ心ニアリ」

(パンフレットより)



 念願の宝厳院を歩いた。一般開放されていないこのお寺の存在を知ったのは2005年のNHKの紅葉生中継である。残念ながら生中継は見ることができなかったが、録画して見た。ハイビジョンでその美しい紅葉の一端を見せつけられたとき、どうしてもこのお寺を拝観したいと思った。
初めて京都に行ったのは中学生の時の修学旅行である。その時に天竜寺を拝観したかどうか覚えていないが、多分行ったと思う。何かにつけ、京都といえば、嵯峨野というポピュラーさに乗せられ、京都行き3回目にして、たぶん初めてじっくりと天竜寺を拝観した。このとき37歳くらいの時だろうか。子どもたち3人をつれて、車で行った。夏のお休みの時で、例によって、どのあたりのホテルかも全く覚えていない。なんだか妙な料理が出てきて、水が生臭く、一番下の娘が「水がくさい」といっては文句を言っていた。そのとき「京都はいやだ」とも言った様な気がする。その時、亀山公園の下の方で、大堰川のほとりを遊んだ。大堰川から天竜寺に向かう道の左手に美しい緑葉をたたえた楓が群生していた。すばらしい楓の枝振りで、ここが紅葉したらきっとすばらしいだろうなと感じていたが、そのまま長い時が過ぎた。
 NHKの紅葉生中継の録画を見て、ああここだと思った。普段は一般開放していないので、普通の旅行本の地図にはなかった。今年は是非にという思いで、あまりの混雑の故、敬遠していた嵯峨野に出てきた。とにかく人が多い。JR嵯峨野駅から人があふれかえっている。駅前で拝観パスポートを売っていたので、それを買い群衆とともに、天竜寺へ。 なかなかの天竜寺の紅葉を一通り見た後、念願の宝厳院へ。
やはりここも、ものすごい人、人、人。皆僕たちと同じような人がいるのだろう。門を入ると少し広い空間があり、ちょうど良い息継ぎのような感じである。道の少し先に鮮度の濃い赤が低いところに見られた。ほうっと思ったらドウダンツツジだった。なかなか見事な赤色を出している。
モミジは見頃には少々早かったが、インクのような鮮やかな紅色がちりばめられていて、楓の木々の肌合いもすばらしいものだった。その合間に巨岩が配され、美しい調和を見せていた。巨岩はこのお庭の特徴である。苔とのコントラストもすばらしい。
人に押されながらの拝観はとても窮屈でゆっくりとお庭を楽しむことはできなかった。これほどの名園を混雑した、著明な美術館の展覧会のように歩くのは本当に残念である。ゆっくりと流れる時間を感じるには人がいないときにくるのに限るが、不可能だろう。引退してからゆっくり来ようかと思う。


紅葉の獅子吼の庭
新緑の獅子吼の庭
参道


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