アトピー性皮膚炎の治療


1)清潔
せっけんで良く洗います。良く洗うことは大切ですが、こすりすぎないように気をつけてください。ナイロンたわしなどで激しくこするのは良くありません。刺激の少ない石けんやアトピー用の石けんがたくさん出ていますので、それらを使用してかまいません。良く泡立てて、汗、あか、ふけをきちんととりましょう。
身体に接触するものに気をつけます。(できるだけ綿のものを身につけさせ化繊は避ける)制服(合成繊維)を着る子供達は、帰宅したらすぐに制服を着替えます。砂遊びや、泥遊び から帰ったら良く手と爪を洗ってください。洗剤、柔軟剤に気をつけましょう。シャンプー はきちんと洗い流しましょう。
入浴はできるだけ頻回にしてください。夏はできたら3回ぐらい、冬は朝シャワーを浴びる習慣にするとかなり効果が期待できます。 "朝シャワしよう!"
お風呂の湯の温度はぬるめにしてください。皮膚温度が上昇するとかゆみが強くなることが分かっています。

2)環境整備
ダニ、カビ、ほこりの少ない環境をつくりましょう。
年長児のアトピー性皮膚炎の原因はダニが主因です。
犬、猫、鳥をできるだけ避けましょう。
砂遊び、泥遊びをしたら必ず手と爪をよく洗ってください。砂や泥の中にはニッケルなどの金属が含まれていて、その金属がアレルギーを起こすことがあります。
季節性変化に注意
アトピー性皮膚炎には必ず悪くなる時期があります。春、秋という季節の変わり目です。春はアレルギーの季節で花粉症が出てくる頃からアトピー性皮膚炎も悪くなってきます。また、秋から冬にかけて気温が低くなり、乾燥が進むと子どもたちの皮膚はかさかさになっていきます。そうするとかゆみがでて、無意識に掻くようになります。その結果、夏頃に良くなっていた場所も悪くなっていきます。夏には汗はかきますが、湿度が高いので良くなっていることが多いのです。

そして、なぜかお正月が悪いのです。豆類や鶏卵、魚の卵、おもち(最近のこどもはあまりおもちを食べませんが)などつい食べる機会が多いからでしょうか。
新年を過ぎてせっかく良くなっていた皮膚の状態が悪くなっていることが多いので、気をつけてください。

3)衣類
体に刺激になる衣類はできるだけ避けてください。ウールがかゆみ刺激を起こします。より太いウール線維の方がかゆみが強くなることが分かっています。 また、ジーンズなどの硬い線維は膝などに機械的刺激を与えますので、ソフトな綿のものの方が良いと思います。 新しい肌着は使用前に水洗いをしてください。
洗剤は界面活性剤の含有量の少ないものにしてください。

4)食物
食物アレルギーのある児はその原因食物を避けることで改善することが多いのです。2歳以下のアトピー性皮膚炎の原因はほとんどが卵、牛乳、大豆などの食物です。唯一の原因療法でかなりの効果が期待できます。乳児期早期にはアレルギー用ミルクを使うと効果があることが多いのです。食事療法は始める年令が早ければ早いほど効果がありますので医師に相談して始めましょう。"勝手に始めないでね"
離乳食を始めているお子さんにはアトピー予防の離乳食が必要です。

5)あせ
暑くなってくると、一般に日本では湿度が高いので、皮膚は比較的良い状態になります。しかし、汗そのものはアトピー性皮膚炎の皮膚にとって悪くさせる因子の一つですので、汗のケアをきちんと行って下さい。首の回り、背中、おしり、おむつの中(猛烈に暑く、蒸れます。ゴムのところも非常に悪くなります。)肘の内側など、一挙に悪くなります。よーく石けんを泡立てて優しく洗って下さい。
研究によるとアトピー性皮膚炎の子どもたちは普通の子どもたちより汗をかく能力が少ないということがいわれております。汗をかかないのも良くないし、汗が残るのも良くないのです。

6)ぬり薬
かきむしらないようにていねいにぬりましょう。かきむしることで、傷がつき、治りにくくなります。かきむしるとその場所から皮膚の細菌が入り込み必ず悪くなります。爪もよく切っておきましょう。
◎ 塗り薬には副腎皮質ホルモンが入っているものと入っていないものがあります。ほとんどの場合、入っていないものを使います。できるだけ副腎皮質ホルモン剤を使用しないで治療してゆきたいと思っていますが、ひどい場合は短期間適正に使い、だんだんと減らしていきます。
◎塗り薬はきちんと塗ります。1日2回は必ず塗りましょう。
◎べちゃべちゃしているときや、かき傷が多い、赤みが強いといった場所には細菌(バイ菌;おもにブドウ球菌)がいます。この細菌は炎症を起こし、かゆみを強め、かきむしることでアトピー性皮膚炎をさらに悪くさせます。
これに対する殺菌療法が必要です。殺菌療法はいろいろありますので、主治医の先生とよく相談してください。

◎カサカサだけの場合は保湿剤を使うとよいでしょう。維持療法としても大切です。   
保湿剤:ワセリン、ヒルドイド、尿素剤、アズノールなど。
※刺激の少ない石けんを使って、しっかり泡をたて、その泡でソフトに洗いましょう。ごしごし強くこすらないで。その後たっぷり保湿剤を塗ります。皮膚を乾燥から守りかゆみをおさえます。

※軟膏を塗るときにも優しく掌でそーっとなぜる様にゆっくりとこどもの体温を感じながら塗ってあげてください。こどももママの体温を感じながら良い感覚に浸る・・・こどもの心も塗り広げているママの心もまたゆったりと時が流れる…そのような時間を共有することが大切だと思います。

保湿剤は皮膚の症状が良くなっていても、日々のスキンケアとして塗ってください。アトピー性皮膚炎のこどもは皮膚が敏感ですので、ちょっとした変化でも悪くなることが多いので、日々のケアが重要です。

7)抗アレルギー剤
7〜8種類あり、症状に応じて効果のあるものを選びましょう。毎日飲む薬で体質改善薬とも呼ばれます。(副作用は最初の頃眠気や軽い下痢がある程度です)
中等症以上には使って効果がみられる場合が多いので私は使うことにしています。3〜12ヶ月使用します。
効果のないものは変更していきます。
皮膚に直接働いてかゆみなどを取るタイプや腸で食べ物が吸収されるときに効果を発揮するタイプ(食物アレルギーが関与している場合:特に乳児)があります。試してみる価値はあります。
最近ではほとんど眠気の無いもの、内服の回数か1日1回のものもあり、使いやすくなりました。

8)漢方薬
時間がかかりますが、効果があることがあります。なかなか治りにくいアトピー性皮膚炎に試してみる価値のある薬剤です。飲みにくいのが難点です。

9)抗ヒスタミン剤
それほどの効果は期待できませんが、非常にかゆみが強いときに使用することがあります。

10)入浴剤
にんにくエキス入り(シャンラブ)、米ぬかエキス入り(ヒフナース、クアタイム)などが市販されています。3週間程使って効果がなければ変更してみましょう。

11)海水浴
夏の海水浴は確実に効果があります。
      "夏は海水浴でよい皮膚を!"

12)低出力レーザー
もともと、痛みの治療に使っていたのですが、アトピー性皮膚炎に効果があることがわかってきました。かゆみの強い子供たちに特に効果がみられます。

13)プロアクティブ療法
軽快後も外用薬を中止せず、毎日のスキンケアとステロイド外用薬やタクロリムス軟膏の間歇的な投与を行うことにより著しい悪化を予防することができるというものです。
適量をしっかり塗り、保湿剤は毎日欠かさず塗ります。症状が軽くても湿疹が出ていたところに1〜3回薄く塗り伸ばす方法です。良くなっていても油断しないということですね。

  14)その他の注意
◎0〜1歳の児はほとんどの場合、スキンケアと軽度の食事療法で良くなります。他のアレルギーを予防するという意味でも食事療法は大切です。お母さんが自分で判断して勝手にしてはいけません。
◎卵や、牛乳など除去するときは生のものが手を加えたものより、また量が多い方が、そして食べる回数が多い方がアレルギーを起こす力が強いのです。
◎アトピー性皮膚炎はいろいろな原因でおこる多因子性の疾患です。なにか一つのことをすればすぐに治るというものではありません。年長児ではなかなか効果がでませんが、皮膚の清潔な管理や日常生活の改善でかなり良くなります。
 先に述べたような治療を気長に一つ一つ確実に行ってゆくことで年令と共に良くなってゆくものです。これまであげた治療はすべて時間がかかるものです。
焦らず根気よくがんばりましょう。必ずよい結果が生まれます。

どうしても副腎皮質ホルモンの塗り薬を使いたくないご家族へ
全く使わずに治療することはできます。時間はかかりますが、ご相談下さい。

※プロバイオテックサプリメントが効果がある?
プロバイオテックスは体に良い働きをするバクテリアのことですが、プロバイオテックスを基本にしたヨーグルトを食べた幼児の群ではアトピー性皮膚炎が食べていない群よりも改善が見られたという報告があります。

補)
◎健康な人の皮膚には黄色ブドウ球菌が検出されることはまれです。これは表皮細胞やディフェンシンやカセリシジンなどの抗菌ペプチドの働きによるものです。しかし、アトピー性皮膚炎の患者の皮膚では表皮の分化が起こり、抗菌ペプチドの発現が低下しているため、患者の皮膚から高率に黄色ブドウ球菌が検出されるのです。
◎アトピー性皮膚炎の患者さんは知覚神経が皮膚のすぐ下に伸びてきて知覚が過敏になることがわかっています。実験で普通の人よりも少しの接触感覚、圧迫感、押された感覚が普通の人では何でもないような感覚でさえ、かゆみとして感じることがわかっています。
このため、異常にかゆみを感じやすくなっているのです。
◎アトピー性皮膚炎の治療がうまくいかないとダニ抗原に反応しやすくなり、将来喘息を起こしやすくなります。
◎皮膚が良い状態を維持しているとき継続して保湿クリームを使用している場合には再燃率が低いというデータもあります。
◎発症リスクが高い家族歴を持っている新生児に出生後7日以内に保湿剤を使用するとアトピー性皮膚炎の発症率を15%に抑えられたという報告がなされています。
前の画面に戻る
禁転載・禁複製  Copyright 1999 Senoh Pediatric Clinic All rights reserved.