母乳栄養
母乳は生後3〜6ヶ月までの乳児にとって最も優れた栄養であります。乳児の栄養の基本は母乳であり、できる限り母乳で子育てをしましょう。
母乳は乳児がお乳を吸うことによって、下垂体という器官からプロラクチンとオキシトシンというホルモンが分泌され、それによって、母乳が分泌されます。生後3ヶ月頃まではこの刺激によって、母乳の分泌量が増加していきます。
利点
@栄養の吸収が最もよいと考えられます。
A母乳中、特に初乳中には分泌型IgAが多く含まれ、ウイルスや細菌の侵入を防ぎます。
感染の予防に重要なのです。
B母子関係における愛情をはぐくみます。いわゆるスキンシップですね。抱っこしてお乳を吸われることで母親は子どもを愛しいと思い、子どもは母のお乳を吸い、心臓の鼓動を聞くことで、母子ともに精神的な安心感を得られます。
C経済的にもいいですね。
成分
母乳の成分は分泌の初期には薄く、乳児が吸うにつれて濃くなるので、母乳の量が多いときには残った母乳を搾って捨てるよりも、最初の母乳を搾る方がいいでしょう。
母親が食べたもので母乳の成分が影響されますが、あまり神経質にならず、偏食に気をつけるくらいでいいです。
授乳
乳児がほしがるときに与える自律哺乳でいいのです。
母乳不足の兆候
@授乳してもすぐにほしがって泣く。
A授乳時間が長くなる
B体重の増加が悪い。
Cお乳が張らない。
母親が終業している場合
仕事の前と帰宅後にできるだけ母乳を飲ませます。保育所などではできるだけ冷凍母乳を飲ませましょう。
ゆざましについて
日本ではゆざましを与える習慣がありますが、きちんと母乳を飲んでいればゆざましを飲ませる必要はありません。
断乳について
満1歳頃までにはやめましょう。1歳を過ぎると母乳には栄養的価値が落ちてきます。飲んでいてもかまわないのです。アメリカでは2歳くらいまでは普通に飲んでいます。
断乳をせずにずるずる続けるの私はあまりお勧めしません。また、早期に強引に断乳するのもあまりすすめられません。できそうなら1歳6ヶ月頃までに思い切って断乳したらいいでしょう。
母乳中の栄養は1歳を過ぎても豊富であると証明されています。(日本母乳の会によって)
全く栄養がなくなると書かれているわけではないとは思いますが、価値がないというのは誤解を招くのではないでしょうか。
WHO/ユニセフでは、少なくとも2歳まで母乳育児を続ける事を推奨していますし、アメリカ小児科学会でも、少なくとも12ヶ月、それ以降は子どもが欲しがるまで続ける事が望ましいとしています。
長期にわたって母乳を続ける事が自立を妨げたり甘やかしになるなどの証拠はなく、母乳育児の期間を制限する根拠はないと言われています。
世界的に母乳育児を支援している団体はたくさんありますが、断乳ではなく自然卒乳が望ましいというのが共通の見解です。
母乳栄養の、断乳の項目以外はとても良い記事を書かれているのにここだけがとても残念です。先生の信念に基づいての事だとは思うのですが 全国の人が見るHPでの記事、しかも小児科医の意見というのはとても影響力のあるものです。どうか記事の再考をお願い致します。
お答え
大変貴重なご意見をありがとうございました。 WHO/ユニセフの推奨については知りませんでした。母乳についても栄養的価値がないというのは書き過ぎかなと反省しております。 お母さん方からなかなか母乳がやめられませんという問いに僕は「別に飲んでいてもかまいませんよ。アメリカでは2歳くらいまで飲んでいるのは普通ですから」と答えています。しかし、お母さん方は「きちんと食事をとってくれないから困る」といわれることが多いのです。そこで飲んでいてもいいが、きちんと食生活の習慣をつけることができないなら、思い切って母乳をやめたらいいですよ、と言います。 長く母乳を飲むのことの良い点はスキンシップですね。それでも僕はあまり長く母乳を飲ませるのは良くないと感じています。一つは離乳食を始めるのは6ヶ月で1歳頃には普通の食事から栄養をとるという習慣づけのためです。 おっしゃるとおり自立や甘やかしなどの証拠はないのでしょうが、長く飲ませている母親にも飲んでいるこどもにもなにかしら無理が働いている気がしてならないのです。