睡眠を気持ちよくとるために

  睡眠は2つの眠りからなっています。レム睡眠とノンレム睡眠です。
シカゴ大学の生理学教授クライトマンが赤ちゃんを見ていて、その睡眠時に眼球が早く動くことを発見し、この睡眠相をレム睡眠と名付けました。眼球が水平方向にぴくぴくと早く不規則に動くもので、この急速眼球運動(Rapid Eye Movement)からこの睡眠相をREM(レム)睡眠と呼びました。
 レム睡眠に対して、レム睡眠以外の睡眠をノンレム睡眠といいます。これらの睡眠相は脳波でも判定することができます。
 ノンレム睡眠は一般に普通睡眠とも呼ばれ、4段階に分かれ、1段階はうとうとと浅く、2段階はすやすや、3段階はぐうぐうと少し深くなり、4段階はzzzz…などともっとも深くなります。睡眠段階が進むにつれて、脳波も遅くなってゆきます。入眠後の最初のノンレムが睡眠がもっとも深い睡眠になります。この最初の深い睡眠が重要で、脳がしっかりと眠る大切な時間です。
さて、レム睡眠の特徴は以下のようなものです。
@ 急速な眼球運動。
A 脳波は睡眠第1段階に近いパターンを示し、脳波から見た脳の活動レベルは「浅い眠り」程度。
B 身体の姿勢を保つ筋肉(姿勢筋、抗重力筋)の緊張がほとんどなくなる。
C 感覚刺激を与えても目覚めにくく、全体的に見た眠りの深さは、軽睡眠(睡眠第2段階)程度。
D入眠後、ノンレム睡眠が約1時間半続いた後に初めて現れ、その後約1時間半の周期で一晩に4〜5回繰り返す。 レム睡眠の長さの平均は1回目が10分くらい、その後は明け方に向かって次第に長くなり、4回目には40分くらい続く。
1夜の全睡眠時間のうち約20%をレム睡眠が占めることになる。
E脈拍、呼吸など自律神経機能が不規則に変化し、自律神経系の嵐といわれる。
F レム睡眠期に起こすと、約80%の人が夢を見ている。
これに対し、デメントという学者はノンレム睡眠の時はわずか7%だけが夢を見ていたと報告しました。

 レム睡眠の時、記憶を書き留めるのに大切な場所である海馬という部分の活動水準が高まるために夢を見ると考えられています。夢を見ているとき、脳はそれが夢であることを知らないらしく、筋肉に活動を命じ続けています。しかし、夢が始まる直前に、脳幹の奥底にある神経細胞核が筋肉という筋肉を緩和させてしまっているので、実際は命令を受けても動きのとれない麻痺状態にあります。これが金縛りです。また、声を出そうとしてもでない状態です。どなたもご経験があるでしょう。
また、みなさんは夢を覚えておられますか。脳に記銘されないので、夢の多くは記憶に残りませんが、朝方の夢は夢想型といって、目覚める直前の夢は意外と思い出されやすいのです。
 ネコを横になることができない程度の小さな台に立たせ、その周りに水を入れておくとレム睡眠が起こらなくなるということです。このようにストレスの状態になるとレム睡眠がなくなるのです。人も同様で、レム睡眠が生体にとり、基本的な活動の一部であり、これをなくすわけにはいかないようです。無理にレム睡眠をなくすと、死ぬことはありませんが、人は不安になり、興奮しやすく、ひどく抑制を失い、特に本能のままに行動し、際限もなくものを食べたりします。不可欠なものなのですね。

 実は、このレム睡眠の時に目覚めるのが目覚めとして一番良いといわれています。したがって、90分の倍数、すなわち6時間、7時間半、9時間後頃に目覚めるのが、すっきりした質の良い睡眠をとる秘訣なのです。

(1998.12)

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