アデノウイルス感染症
アデノウイルス感染症とは
アデノウイルスはその感染により咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、急性咽頭扁桃炎(滲出性扁桃炎)の他、急性胃腸炎、出血性膀胱炎、重症肺炎などいろいろな臨床症状を示します。
アデノウイルスは51種類あるといわれており、そのうちのいくつかが上記のような疾患を起こしてきます。
感染は飛沫や接触によって起こります。
腸重積、腸管リンパ節炎、虫垂炎などにも関与していると言われています。
それぞれの疾患により症状は変わってきます。
急性胃腸炎を起こすものを腸管アデノウイルスといい、胃腸炎の11%くらいといわれています。下痢、腹痛、嘔吐などの消化器症状を示し、発熱は余りありません。
分離される頻度が高いアデノウイルスは血清型番号が1〜8型です。
急性咽頭扁桃炎
口蓋扁桃に白色の滲出物を伴う急性扁桃腺炎をおこし、高熱が数日間続きます。滲出物を認めない扁桃発赤や咽頭後壁のリンパ濾胞の腫脹を示すものもあります。
アデノウイルスは3型が多く、1、2型が続いて多いようです。眼の所見はありません。
年齢は1歳から4歳に多く見られます。最近では5歳〜10歳などの大きな子も発生しています。
季節は春から夏にかけて多いと考えられていますが、冬にインフルエンザなどと同時期に発症することもあります。
再感染も認められています。
症状
発熱期間は3日から7日ほど続きます。大体は3日から4日で下がることが多いです。抗生物質は効果はありません。白血球数は多く、CRPは高値となります。咳がかなり出る場合もあります。
診断
迅速診断キットを使用し、確定できます。
治療
効果があるものはないので経過観察のみです。最近では大体4日くらいで熱は下がり、そのまま回復します。
保育園などで治癒証明などを要求されることがありますが、必要ありません。 アデノウイルス7型による重症肺炎
アデノウイルス7型(3,21型もある)が乳幼児に感染し重症肺炎を起こすものです。頻度は高くありません。
心臓や肺に基礎疾患を持つ小児に致命的な呼吸器感染症を起こすことがあり、海外では死亡例も報告され、国内でも報告されています。基礎疾患がある子については重症化する恐れがあるのです。
日本では3型が多く見られます。3型に比べ7型の方が熱が高い傾向があるものの、特徴的な症状はないようです。ただ、激しい咳などを伴ったり、下気道症状が強い場合、要注意です。 症状
発熱、咳、呼吸障害のほか、意識障害、けいれん、浮腫、嘔吐、下痢、出血傾向、低血圧、喘鳴、筋肉痛、咽頭痛など多彩な症状を呈します。
血液検査ではいろいろな異常が見られ、白血球減少、貧血、血小板の減少などを示します。
合併症として、肝機能障害、脳炎・脳症、胃腸症状、腎、心臓にも多彩な障害をきたします。
死亡率は10%以上といわれています。 診断
迅速診断キットを使用し、確定できます。
治療
治癒させる薬はありません。対症療法しかありません。細菌感染が合併していると思われるときには抗生物質を使用します。
血液中のサイトカインが高いときにはステロイドやガンマグロブリンが使用されます。
※感染は飛沫、接触によって起こるため、感染が疑われた患児との接触を避け、医師や看護師の手指や白衣、患者の衣服の消毒を徹底することが重要です。患児のケアをした医療スタッフはオスバンアルコールなどで手指を消毒します。また、衣服や下着は0.2%次亜塩素酸ソーダ液に2時間浸します。
手洗いは流水でよく洗い流します。消毒には90%エタノールが有効で、白衣などは高圧滅菌処理(120゜C 2気圧)が望ましいです。金属には煮沸消毒が有効です。
ウイルスは糞便にも出てくるので、糞便の処理も必要です。