先天性胆道閉鎖症


先天性胆道閉鎖症とは
胆汁が流れる管(肝外胆管)がつまって生まれてしまったために腸に胆汁が流れず、黄疸が進み、そのまま進行すると肝硬変となり死亡する困った病気です。
新生児の黄疸の中では最も重要な病気です。

原因
よくわかっていません。1万人に1人の頻度で出現するといわれています。女児に多いといわれています。妊娠中の母胎にウイルスが感染したためにおこるのではないかという意見もあります。

症状
生後から見られる黄疸が2週間以上たってもなかなか消えず、黄疸がじわじわ強くなってきます。一度消えたように見えた黄疸が再びでてくることもあります。腸に胆汁が流れないために便が白くなってきます。一方尿中には胆汁の分解産物が流れ、尿は茶褐色になります。ミルクもよく飲み、比較的元気さは保たれます。

診断
黄疸が続く場合、血中の黄疸の色素であるビリルビンをはかります。ビリルビンの中には直接型と間接型があり、直接型ビリルビンが1mg/dl 以上であれば検査をすすめていく必要があります。
母乳黄疸なども鑑別の対称になりますが、母乳黄疸はほとんどが間接型ビリルビンです。
直接ビリルビンが高いときには、暗めの黄疸になります。
診断は難しく、いろいろな検査を組み合わせて診断します。新生児肝炎と鑑別が難しいのです。どうしてもわからないときには試験開腹をすることもあります。
重要なのは60日以内に手術をする必要があるので、それまでに診断をしておかなければならないのです。

治療
早期診断、早期治療が重要です。生後60日以内に手術をしないと黄疸は消えず、肝硬変への道をたどることになります。ですからそれまでに早期に診断して手術を受けることが必要です。
肝移植
手術をしても胆汁がまったく流出しない場合には、肝移植を余儀なくされる場合があります。

注意すること
新生児期からの黄疸が続く場合、生後2週間以上たっても黄疸が消失しない場合には医師の診察を受けましょう。
2ヶ月前に来院されたときに黄疸があると非常に不安になります。この疾患で手術をする期限にとても近いからです。
新生児肝炎症候群という疾患があり、非常に症状がよく似ているので、区別が難しいことがあります。きちんと鑑別診断をするために検査を受ける必要があります。
※胆道の完全閉鎖には出生前に完成しているものと、出生前後に完成する例があります。そのため出生後に閉鎖するものでは診断がとても難しくなります。便が少しでも黄色、あるいは緑色を呈している場合でも、母乳栄養児では母親が摂取した色素成分が母乳中に含まれていることがあり、灰白色の便ではないことがあります。母乳の中止で灰白色の便になります。

将来のこと
生後60日以内に手術をすると約90%の子どもが黄疸は良くなります。しかし、黄疸は消えても肝機能の異常は続くことがあります。黄疸が消えても肝硬変になったり、脾臓という臓器が腫れ、吐血をすることがありますので、定期的に検査を受ける必要があります
約20%の子どもは黄疸が消えて、肝機能検査も異常がなくなり、健康な子どもと同じように生活ができるようになります。

(文献  29 38)


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