新生児肝炎症候群
新生児肝炎症候群とは肝内胆汁うっ滞(肝臓の中に胆汁が貯まること)によって直接型ビリルビンが高くなる肝障害を示すもので、原因が分かっていません。
原因がはっきりしないため感染症、内分泌疾患や先天性代謝異常など種々の病気を含みますので、このような呼び方になっています。頻度は出生4800〜9000人に1人とされ、、新生児期の肝疾患としてはもっとも多いものです。家族内発症が10〜15%に見られ、散発例に対して予後が悪い傾向があるといわれています。
厚生省の特定疾患研究会では「新生児期に発症したと考えられるもので、多くは生後2ヶ月以内に発見された肝内胆汁うっ滞で黄疸は1ヶ月以上持続し、多くは6ヶ月以内に消退する。灰白色(または淡黄色便)および濃黄色尿を伴う。組織学的には巨細胞性肝炎の像を見ることが多い。ただし、尿路感染症、敗血症、梅毒、その他全身感染症あるいは全身性代謝性疾患(ガラクトース血症、チロジン血症を除く)など2次性のものはのぞく」と定義されています。
原因
はっきり分かっていません。種々の疾患が含まれていると思われます。 症状
生後2ヶ月以内に黄疸、肝腫大、灰白色便、脂肪便、褐色尿が出てきます。体重増加不良も見られます。 検査
血清の総ビリルビン(特に直接ビリルビン)の上昇が見られ、肝機能検査(ALT,ALT、ALP、LAP、γGTPなどが上昇)の異常がみられます。
リポプロテインXは初期は陰性ですが、遷延化すると陽性になることがあります。
AFP(アルファフェトプロテイン)は乳幼児期は上昇することがありますが、新生児肝炎症候群ではより高値になることがあります。
新生児肝炎症候群と鑑別が最も重要なのは胆道閉鎖症です。胆道閉鎖症は手術が遅くなると命に関わりますので、鑑別診断は非常に重要です。 肝胆道排泄シンチグラフィ、超音波、MRCP、最終的には肝生検などを行います。
治療
栄養管理、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の補充、胆汁排泄促進剤などの投与。 合併症には頭蓋内出血などの重篤なビタミンK欠乏性出血やビタミンD欠乏によるクル病、ビタミンE欠乏による神経学的異常などのものがありますので、ビタミンA、D、Eなどを投与します。脂肪吸収改善を目的に、吸収に脂肪酸が関与しない中鎖脂肪酸を含むMCTミルクを投与します。胆汁排泄促進剤としてウルソデオキシコール酸やフェノバルビタールを投与します。 予後
予後は一般的には良好です。長期間の観察でも、慢性肝障害に移行した例はほとんど見られず、約95%が1歳までにほとんど治癒しています。しかし、まれに肝障害が慢性化する例や、急激に肝不全に移行する進行性のものもあります。
予後不良の因子として生後6ヶ月以上に及ぶ遷延性重症黄疸、白色便、家族性発症、持続する肝腫大、肝生検における高度の炎症所見などが上げられています。