先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)


甲状腺機能低下症には先天性のものと後天性のものがあります。先天性甲状腺機能低下症が全体の80%を占めます。
先天性甲状腺機能低下症をクレチン症と呼びます。

原因
甲状腺そのものがないか、あるいはあっても十分な大きさがないか,別の場所にあって働かないか,甲状腺ホルモンがうまく作られないことなどによっておこります。
頻度は約8000人に1人の割合で見られます。男女比は1:2で女児が多いようです。
新生児期のマススクリーニングが行われるようになって,以前考えられていたよりも高頻度であることがわかってきました。

症状
出生時体重は正常ですが,しだいに成長・発達がおくれてきます。新生児黄疸から引き続き黄疸がなかなかとれません。
顔つきは特徴があり,眼瞼(まぶた)がはれぼったく,鼻は低く,いつも口をあけ,大きな舌を出しています。これをクレチン顔貌といいます。皮膚は乾燥し,あまり汗をかかず、腹部は大きくふくれています。また、臍ヘルニア,がんこな便秘があります。
また四肢とくに手足の指が短いことが特徴的です。周囲に興味を示さず,あまり泣かずによく眠ります。体動も不活発で、おとなしい子どもです。
これらの症状は乳児期以後にみとめられるものが多く,新生児期にははっきりした症状を示しにくいものです。
大切なことは生後すぐの時期に甲状腺ホルモンがないと中枢神経の発達に非常に悪い影響を与えるので早期診断が大切です。

診断
新生児に甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定によるマスースクリーニングがガスリー法といっしょに行われるようになり、異常値を示した子について引き続き精密検査を行います。
甲状腺刺激ホルモン値が高く、甲状腺ホルモン値が低いと診断が確定します。
その他、骨年齢(大腿骨遠位骨頭核、一般にクレチン症では骨発育が遅延し、この骨頭核が出現していないか、または小さい:手根骨は3ヶ月で出現してくるため診断できない)、甲状腺超音波検査などを行います。

治療
診断が確定したら甲状腺ホルモン製剤を投与します。症状がそろっていて、濾紙によるマススクリーニングのTSHの値が異常に高い場合には治療を開始します。
早期診断・早期治療がその後の発達に大きく影響します。生後3か月以内に治療が開始できれば正常の発達を期待できますが,生後12か月以後では知能障害を残してしまいます。

その他
TSHスクリーニングのみでは視床下部性および下垂体性クレチンが見逃されますので症状があれば要注意です。

新生児マススクリーニング
生まれた後、5日以内に足の裏から一滴の血液を濾紙でとり、いろいろな検査を行います。

クレチン病と鑑別しなければならない病気
一過性甲状腺機能低下症
 原因は胎児造影によるものが多く、そのほかTSH結合阻害免疫グロブリンによるもの、母胎への抗甲状腺薬の投与の影響、患児の未熟性などがあります。男女比はクレチン症と異なり1:1。一時的に甲状腺薬の投与が必要となりますが、長期投与は不要です。
一過性高TSH血症
 TSH が経度上昇する以外は、甲状腺ホルモン値をはじめ検査所見、臨床所見などすべて正常です。生後数ヶ月でTSHは正常化します。治療の必要はありません。一過性甲状腺機能低下症やごく軽度のクレチン症との鑑別が必要になることがあります。

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