腸管出血性大腸菌感染症(O-157を含む)

大腸菌は人の腸にも多く存在する細菌ですが、このうち、はげしい下痢などの腸炎を起こすものがあり、病原性大腸菌と呼ばれています。  その中でも腸管出血性大腸菌感染症(EHEC)は激しい血便と溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こすことがあり、死亡、あるいは重症の合併症をきたす注意を要する疾患です。
この感染症の特徴はベロ毒素を産生します。ベロ毒素は志賀菌毒素群の中で志賀毒素1(VT1,Stx1)と志賀毒素(VT2、Stx2)があります。EHECは一方か、その両方を産生するするものです。 病原性大腸菌O157は最も検出頻度が高く毒性が強いもので、経口感染します。しばしば食中毒として、集団発生することがありますが、散発例もかなり見られます。

O157による症状
 病原性大腸菌O157の潜伏期間は4〜9日です。他の食中毒よりも長いのが特徴です。はじめは軽い腹痛、水様性下痢で発症しますが、頻回となり、一部の人は鮮血を伴う出血性下痢と激しい腹痛などの症状を起こしてきます。通常は発症後4〜8日で軽快します。発熱はそれ程高くなく、初期に見られますが、あまり続きません。
 しかし、溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こすと重症になり、乳幼児や小児などでは死亡することもあります。


病原性大腸菌O111による腸管出血性大腸菌感染症による溶血性尿毒症症候群にて4人の方が亡くなりました。ユッケといわれる生肉を食することで発症しました。O111は今までEHEAを起こしたことはありません。大腸菌は本当に油断できないのです。
これを防ぐためには厚労省や業者を当てにせず、自分で身を守るしかないのです。つまり、生の肉食をしないということにつきるのです。仮にトリミングという表面を削り取る処置をしていても、まな板とか包丁の刃に菌がついていることも十分可能性があるのです。

他の食中毒菌との比較
 普通の食中毒は菌が100万個以上ないと発症しませんが、病原性大腸菌O157は100個ぐらいでも発症すると言われています。

治療
20〜30%はHUS、あるいは脳症を起こしますので、早期発見が重要です。
O157:H7でVT2陽性のものが重症化しやすいといわれています。発熱、白血球数、CRPの急激な上昇は要注意です。 合併症を起こさなければ、普通の細菌性腸炎の治療と同様に食事療法をして、初期に抗生物質を使用し、軽快してきます。

予 防 対 策
1)生ものを食べるのは控えめに。気温が上がってきたら要注意です。特に生肉(ユッケ)、生レバなどは危ないですね。
2)新鮮な材料を使いましょう。
3)加熱は十分に!
 加熱する食品は内部まで十分熱が通るようにしましょう。
 内部の温度が75℃以上で1分間以上加熱すればこの菌は死滅します。食品中のものの場合は5分以上加熱します。
 加熱後は、細菌に汚染されないよう清潔に保存しましょう。
4)冷蔵庫を過信しないようにしましょう。
 調理したものはできるだけ置かないようにしましょう。
 細菌が増殖する時間を与えないことが大切です。
5)清潔な手と清潔な器具で!
 食品を取り扱う前や用便後は必ず手を洗い消毒しましょう。
 まな板、包丁
 @十分洗浄し、熱湯をかけ、消毒薬で消毒しましょう。日光のあたる場所で自然乾燥させましょう。
 Aまな板、包丁は、下処理用と仕上用とは区別しましょう。
 食器・調剤器具
 @洗剤でよく洗いましょう。
 Aよくすすぎます。熱湯をかけ、その後水分を完全に拭き取って収納して下さい。
 ふきんの取り扱い
 @食器等を拭いたふきんは洗剤などでよく洗いすすぎます。
 Aすすいだふきんは塩素系洗剤(ブリーチ・ハイター・ピューラックス等)を300〜500倍に薄めた駅に10分以上つけた後、水洗いします。
 B日光がよくあたるところで干し、乾燥させます。
 Cアイロンをかければさらに安全。
 手洗い
 @爪をよく切ります。
 A石けんを使い流水でよく洗い流します。
 B清潔なタオルやペーパータオルでふきます。
6)二次感染に注意!
 @患者の糞便を処理する時は、ゴム手袋などを使用するようにしましょう。なおかつ手をよく洗います。
 A患者の糞便の汚染された衣服などは、煮沸や薬剤で消毒したうえで家族のものとは別に洗濯し、天日で十分乾燥しましょう。
 B患者がお風呂を使用する場合には、乳幼児などとの混浴を控えましょう。
 トイレ
 @トイレは常に清潔にしてあれば特別な消毒液などを使う必要はありません。
 A用便後やトイレの掃除の後は石けんと流水でしっかり流して下さい。

7)ハエから食品を守りましょう
8)飲料水の衛生管理を!
 水道水以外の水を飲用や調理に使用する場合は、定期的に水質検査を受け、飲用に適しているかどうか確認しましょう。
 貯水槽の清掃、点検を定期的に行いましょう。


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