ヒトメタニューモウイルス感染症(HMPV)


ヒトメタニューモウイルス感染症(HMPV)とは
小児の呼吸器感染症の5〜10%を占めると考えられています。乳幼児のHMPV感染症はRSウイルス感染症とよく似ています。重症例では喘息様気管支炎、細気管支炎、肺炎などと診断されることが多いようです。再感染を繰り返し、低出生体重児、骨髄移植、心臓・肺移植などの患者さんでは重症化しやすく、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患の患者さんの急性増悪にこのウイルスが関係しているといわれています。脳炎、脳症も起こす可能性があるといわれています。 母親からの移行抗体が消失する生後6ヶ月くらいから感染が始まり、2歳までに50%、10歳までにほぼ全員が感染します。RSウイルスに次ぐ細気管支炎の重要な要因です。

診断
鼻汁を鼻咽頭から綿棒でこすって取り、RT−PCR法という方法で行います。外来で検査できるようになりました(2013.2)。
日本では年間を通して見られますが、特に冬から初夏に多いといわれています。

症状・経過
潜伏期は4〜6日くらいです。1週間程度で症状はよくなりますが、高熱が持続することが多いケースもあるようです。発症して4日目くらいから喘鳴が出てくることもあるようです。ウイルスの排泄は1〜2週間持続します。生後6ヶ月からhMPVの感染が始まり、2歳までに約半数が、遅くとも10歳までに全員が初感染を受けます。hMPVの感染症は1〜2歳が最も多く、RSウイルスより初感染は遅い傾向です。
一歳以下でも入院の例が多いようです。

治療
hMPV感染症に効果のあるワクチンはなく、多くの場合は症状を抑える対症療法が主になります。軽症の場合は、水分補給・睡眠・栄養・保温をして安静にして経過をみることになります。 重症化すると入院して輸液や加湿された酸素投与などを行い、大部分は治癒します。入院で重症化している場合は効果的な治療はまだありません。
早期にロイコトリエンや受容体拮抗薬やβ2刺激薬を積極的に使用すると効果が期待できます。ステロイドはアレルギー素因の主には効果が期待できます。

感染予防
hMPVの流行時期は3〜6月です。飛沫感染と接触感染によってうつるため、乳幼児の多い保育園では感染が広がりやすいことがあります。鼻汁、喀痰などが手指、さわったものなどに付着し、接触感染することもありまた、保育者の手などを介して接触感染しますので、“手を洗うこと”が非常に重要です。風邪にかかっている人は手洗い、マスクなど励行しましょう。
2週間くらいはウイルスを排出するといわれていますので、注意が必要です。

院長通信
このウイルスは3月頃から出てくるので、RSの後から問題になります。RSVと同様、あまり小さなお子さんはできたら、集団には連れて行かないようにしていただきたいです。感染は主として手や接触して起こるといわれています。咳で広がることはあまりありません。手洗いが大切です。
治療ポイントは湿度と水分量ですね。これが維持できていると、なんとかしのぐことができます。

(文献 41)

前の画面に戻る 急性気管支炎へ

禁転載・禁複製  Copyright 1999 Senoh Pediatric Clinic All rights reserved.