溶連菌感染症
溶連菌感染症とは
溶連菌(溶血性連鎖状球菌)という細菌が飛沫(ひまつ)感染しておこる病気です。
症状
毎年冬を中心に流行するといわれていますが、1年中あります。熱がでて、のどが赤くなり痛みます。カゼと少し感じが違います。手首やくびの所や股関節の所に小さな赤い発疹がみられることもあります。また舌がイチゴのように赤くブツブツしてくることがあります(イチゴ舌)。イチゴ舌は治療されていない溶連菌症の時に出てきやすい傾向があります。また回復期、2週間前後で手足のさきから皮がむけること(落屑)があります。口角炎ができることがあります。
熱がなくて、少しのどが痛いくらいで終わることもあります。こういう場合は要注意です。
治療
抗生物質を飲めば2〜3日うちに熱は下がります。症状としては4〜5日うちに消失しますから、かぜ程度です。ところがこの溶連菌症はかぜとはちがうところがあります。
というのは治療しないでおくと、合併症として急性腎炎やリウマチ熱を起こす可能性があることです。急性腎炎は発症すると、入院が必要で2ヶ月、治癒するのに6ヶ月くらいかかります。一部慢性腎炎になるのでそうなるとたいへん厄介なものです。リウマチ熱は現在ほとんどありません。この合併症を予防するためにペニシリンかセファロスポリン系抗生物質を10日間内服します。症状がなくなったからと、3日くらいで中止しますと、再発し、腎炎などにかかりやすくなります。
1週間毎に検尿をして異常がないことを確かめます。
効果のある抗生物質を飲むと24時間以内に感染しなくなります。また症状のない保菌者(菌を持っている人のこと:5〜30%ともいわれています。)からは感染しません。
診断
熱がでてのどが痛いと、すべてが溶達菌症かというとそうではありません。ほとんどはウイルス性です。確定診断のためにのどから菌をぬぐいとって、すぐにわかるテストか、またあるいは培養検査を行います。
のどが大変痛い場合は、溶連菌でない場合、細菌性のことが多いと思われます。
抗生剤を内服している場合には検査をしても陰性になります。
発疹が全体にでている場合は猩紅熱といわれています。これは溶連菌の出す毒素で全身が真っ赤になったり、小さい発疹が首や股、手関節などに密集して出るものです。かゆみを伴います。のどに所見がなく、発疹だけのものもあります。この場合は咽頭培養やキットの検査では出てこないことがあります。
注意すること
◎兄弟にはよくうつります。また、親にも感染することがあります。その場合は予防的にペニシリンを飲むと発病をおさえることができます。4日間ほどのみます。(予防内服)親御さんの場合は急性腎炎になることはほとんどありませんので、症状が落ち着くまで内服すればいいと思います。
◎学校や保育園、幼稚園は2〜3日間休みます。
◎溶達菌症はくり返すことがあります。かかりやすい子はくり返す傾向があります。溶連菌といっても種類が多く同類の菌が約二十種類以上存在し、それが次々に流行するのです。
ペニシリン内服の期間は現在は10日間が全国的にも多いようです。5日間で十分という医師もいます。ただ、飲み終わってすぐに再び発症することがあります。その場合はほとんど同じタイプの溶連菌と考えられ、治療が不十分と考えられますので私は2週間内服していただいています。8週間以内に再発した場合は同じタイプの菌によると考えられています。それ以上だと別のタイプの菌である可能性が高いようです。ただし長くなると、ペニシリンによる発疹が出現することがあります。この場合は他の抗生物質を使用します。
(補)
悪寒戦慄を伴う高熱や回復期の病変部の落屑などはA群β溶連菌が産生する菌体外毒素のうちの発熱毒素(streptococcal pyogenic toxin)によっておこる。この毒素は通常の免疫抗原に比べて非常に強いT細胞活性能を持っていることからスーパー抗原と呼ばれている。ごく微量で短時間のうちに通常の特異的免疫反応に比べて膨大な量のT細胞を活性化し、異常に過量のTNFα、TNFβ、INFγなどのサイトカインを放出させ、生体にとって不適当な免疫応答を惹起し多彩な病体を発現させる特徴がある。