破傷風
破傷風は、破傷風菌が菌体の外に放出する外毒素(破傷風毒素)により神経が侵される感染症です。破傷風菌は頑丈な芽胞の形態をとり、土壌や糞便中に常在し、創傷部位から体内に侵入して感染します。
ヒ卜からヒトヘと感染することはありません。
破傷風は世界中のどの国でもみられる疾患です。衛生状態や予防接種の普及の状況から、先進国よりも途上国で患者が多く認められる傾向にあります。
日本では、第二次世界大戦後の1950年に2、000例近い患者が報告され、致死率も80%を超えていましたが、1968年の予防接種法に基づく3種混合(DPT)ワクチンの定期接種開始により患者数は大幅に減少し、近年は100例前後の患者数、死亡者は10例ほどで推移しています。日本での近年の破傷風患者の多くは、破傷風トキソイドを含むDPTワクチンの接種の機会がなかった年長の成人であり、抗体保有率を年齢別にみても年代により差が生じています。
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、被災時に負った傷口から感染したと考えられる震災関連破傷風10例(福島、宮城、岩手の3県)が認められました。2006〜2011年の日本全国で報告された破傷風患者から震災関連破傷風患者を除外した656例と震災関連破傷風患者とを比較すると、震災関連破傷風患者が全て50代以上であることが特徴的です。
症状
破傷風の潜伏期間は2〜50日ですが、通常は3〜21日で症状が現れます。
咬筋の學縮のため□が開きにくくなる開口障害、現下困難などの局所症状に始まり、強直性痙學、後弓反張や呼吸困難といった全身症状に移行し、呼吸筋の麻庫により窒息死することがあります。
また芽胞が侵入した傷口が中枢神経から連いほど潜伏期は長くなり、潜伏期が短いほど致死率が高くなる傾向があります。
予防
日本では現在4種混合の中に破傷風のワクチンが含まれていて、定期接種となっています。
破傷風は早期発見が難しく、発症すると先進国でも致死率が10%を超える治療困難な疾患です。どこでも誰でも罹る可能性がありますので、ワクチンでの予防がたいへん重要です。
文献
1)岡部信彦(編)。小児感染症学第2版、診断と治療社、p.232-233、2011
2)福島雅典(総監修)。メルクマニュアル第18版日本語版、日経BP社、2006(http://merckmanual.jp/mmpej/sec14/ch178/ch178i.html)
3)国立感染症研究所感染症疫学センターホームページ(http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02JI/k02_15/k02_15.html)