GRAN SPORT



GRAN SPORT
グランスポーツ試乗記
 こいつはすばらしいスポーツカーである。エンジンのサウンドがとにかく良い。ダッシュボードにあるボタンを押すと、キュキュキュキュン・グオーン始動する。まさにフェラーリのサウンドである。スポーツモードにすると排気音が変貌する。低くボボッーンと唸る。エグゾーストのノズルが開くのだという。近所迷惑になるので、最初はノーマルモードでスタート。ただし4000回転以上になると自動的にスポーツモードになるらしい。アクセルを踏み込むと瞬時に反応する。ダッシュは予想通り、すざまじいのひとことである。足回りは堅く締まり、機敏にラインを引く。路面をかなり拾うがこれは仕方がないだろう。しばらく走っているとこれにもなれる。
高速を走ってみると、その安定感に驚かされる。今のクアトロポルテに比べると秀逸である。TRCが効いているのでかなりクアトロポルテに比べても安全に走行できるようだ。
 ステアリングは肉厚でここにカーボンファイバーを用いている。持ちやすく扱いやすい。ミッションはステアリングの前側にあるパドルでギアチェンジする。ガンビオコルサという6速セミオートマである。小気味よい。オートマモードで走ってみる。ボタンを押す。アクセルのタイミングを覚えたら結構スムースに走ることができる。減速するとき、グィーン、グィーンとシフトダウンしていく。これがたまらない。スポーツモードだとさらに強く反応する。スポーツモードにすると、足回りは強化され、音もチューンされ、さらに加速が良い。足回りが非常に堅くなるので、乗り心地はかなり悪い。音はすばらしくこの音だけでこの車を買う価値があるという人が多い。
 内装も結構いけている。ドイツ車の機能美などとは無縁の世界である。もちろんナビなど柔なものはついていない。スタイルも古典的な美しい形状のクーペで、随所にこだわりが見られる。クーペに比べると車高が低く、細かなところでスポーツさを強調している。ワイルドさが前面に出ている。バックビューもグラマラスであり、全体が気品と色気に満ちている。インテリアはいろいろカラーバリエーションを楽しむことができる。写真はダッシュボードはベージュの革だが、カーボンファイバーがスポーティでいい気がする。カーボンファイバーをかなり多く使用している。しかしながらオプションを含めて結構値段が高い。外観のカラーバリエーションはあまり選択肢がないのが残念と言えば残念。全体のトーンはクアトロポルテに比べるとやはり黒が似合う。4人乗りだが意外と広く、後部座席は大人が十分に長い距離を乗ることができる空間を備えているのはすばらしい。
欠点といえばやはり低速ではうずうずするのだろう、うーんうーんという感じ。欲求不満状態になる。普通に乗るには扱いにくいだろう。また、バックするときにはよく見えない。ドアを開いて後方を見ようとするとバックギアがはずれてしまう。これは大変困る。これはニュークアトロポルテも同じである。センサーが必要だろうが、グランスポーツには似合わない。バックのギアもあまりにかわいらしすぎる。トランクはかなり狭い。ナビがないのもちょっと寂しい。遠くに行ったときに困る。ドアにパワーウインドのスイッチがない。ライトスイッチが遠い。前のモデルは日本車のように、方向指示器のところについていたのに、これは残念。オートライトもほしい。トンネルに入る度に体を前に傾け左手を伸ばしてスイッチを入れたり、切ったりしなければならない。それと驚いたのはウインカーがパネルの中で両方向にランプがつくようになっている。要するにどちらの方向にウインカーを出しても、パネルの中ではハザードがついているのと同じ状況である。これはいくら何でもひどい。
ハンドルの位置調整をしようとしたら、ハンドルががくっと下に落ちそうになった。少々驚いた。まあいろいろあるが、 日本車とは違うのだから、これくらいは仕方ないかと思わせる。思わされてしまう。
いろいろな点でスポーツカーとしての資質を追求し、堪能させたいというコンセプトで作られている。ただし、マセラティは強く速く走ることだけではなくて、すべての面で艶っぽく遊び心がある。この点がポルシェやその他のドイツ車やイギリスのスポーツカーと一線を画しているところだと思う。日常生活で日本車になれていたら、不便を感じることが多々あるだろうが、余分なものはできるだけ省くという信念が貫かれている。僕のような素人でもそのおかげで原点に立ち戻ることができる気がする。
本当にマセラティのスポーツマインドを心から感じさせてくれる1台である。若いうちに乗ってみたい車だ。



SPIDER and COUPE
マセラティのオープンスポーツ2シーターと4人乗りクーペである。スパーダーはとてもおしゃれで極めて速い車である。クーペは少々ジェントルの雰囲気がある。


前の画面に戻る イタリアM車の部屋へ
禁転載・禁複製  Copyright 1999 Senoh Pediatric Clinic All rights reserved.