経口補水療法とは
小児は嘔吐下痢症などウイルス感染等で頻回に下痢や嘔吐を起こします。嘔吐や下痢のために水分や電解質が失われます。その結果脱水症を引き起こし、ひどい場合は死に至ることもあります。脱水にならないように治療することが大切ですが、症状が強い場合は脱水に陥ることもあります。
小児の脱水を予防することと、その症状を改善させるため最近「経口補水療法(Oral rehydration therapy:ORT)」という治療法が行われるようになりました。
もちろん脱水症状がひどい場合は輸液治療を行うのですが、輸液をする頻度を減らすことができるようになると期待されているのです。
小児の輸液は子どもに痛い思いや恐怖、不安などを与えてしまいます。また、嘔吐下痢症が流行る頃は一般のカゼに加え、インフルエンザやRSウイルス感染症、気管支炎など多くの病気が流行する時期ですので医院は大変混雑することになります。患者さんが多くなるとスタッフの手が回らないことやお部屋の確保が難しくなり、小児の輸液は簡単ではないため、時間がかかります。その結果、待ち時間が大幅に増えるなどの問題も出てきますので、輸液をしないですむのでしたらその方が良いのです。ただし、日本中に「点滴信仰」のようなものがあり、「点滴してくれなかった」いうような不満も出ることがありますので医院にとっては悩ましい問題です。
しかし、「痛い思いをさせないで家に帰すことができる」ことは小児科医にとってとても良いことなのです。
2003年アメリカ疾病管理予防センター(CDC)のガイドラインでは「ORTとは、主として水分補給のみを意味していたが、今日では、維持療法および適切な栄養補給も含めた広い意味を示す」と定義されました。
重度の脱水症状では、速やかに入院して輸液を行わなければなりませんが、軽度から中等度の脱水症状に対しては、水と電解質をすぐに補給できるように調整された経口補水液(Oral rehydration solusion:ORS)を用いることにより、有効にこれらを治療することが可能になりました。
注意点
いわゆる一般のイオン飲料等のナトリウム濃度は、ORSよりも低く、大量に摂取すると低Na血症を起こすことがありますので、注意が必要です。また、Naをまったく含まない水、お茶のみにより脱水を補正することは勧められません。本ホームページにも嘔吐が止まったかどうか試すには水やお茶でも良いのですが、十分な量を飲んでいただく場合には経口補水液を飲ませてあげてください。
しかし、実際に臨床をしていますと、飲んで欲しいと思っているNa濃度の高いOS-1はその分塩辛く飲んでくれない場合が多く、あまりしょっぱさを感じないアクアライトORSをうまく使って治療することもあります。こちらのほうが飲んでくれる比率は高いようです。
ただ、脱水を起こしてきかけている子どもは少ししょっぱくても飲んでくれるという報告もあるようですので、勧めてみるのが良いでしょうね。