インフルエンザワクチンQ&A 1 予防接種の必要性
インフルエンザは5〜14歳の罹患率が最も高く,秋から春先にかけて毎年流行します。現在,Aソ連型・A香港型,B型の3種類が同時に,あるいは混在して,それぞれが毎年少しずつ変異しながら流行を続けています。インフルエンザにかかりますと、肺炎,気管支炎のほか,脳症,ライ症候群,心筋炎,中耳炎などの合併症もあり,大きな被害や生命の危険があります。ワクチンを受けると,インフルエンザにかからずにすみ,たとえかかっても発熱などの症状が抑えられ,合併症や死亡する危険から逃れることができます。
A香港型、Aソ連型共に前のシーズンの接種で獲得した抗体価の約70%が翌年まで維持されているという報告があり、毎年きちんと継続接種することが大切です。
2 インフルエンザの病気としての特性
ワクチン接種を受けたのに,インフルエンザに罹ってしまうことがあります。インフルエンザの特徴は次のとおりです。
1)かぜのウイルスには約230種以上もあって,インフルエンザとかぜを区別することは臨床的にも困難です。インフルエンザには3つの型がありますが,1つ1つの型の中でも変異があります。
2)潜伏期が非常に短く,1〜2日に発病します。
3)気道に侵入・定着したインフルエンザウイルスが一次増殖を始めて,発生した局所の炎症がすぐに全身の症状に進行します。
4)ウイルス血症がほとんど起きません。
3 予防接種の実際
1)接種の回数
2回行って下さい。13歳以上は毎年接種していますと1回でよくなりました。
2)接種の間隔
1〜4週の間隔ですが,抗体のできかたから4週の間隔が最適です。
3)接種量
年齢で接種量が違いますので注意が必要です。
4)副反応
局所の発赤,腫脹,疼痛など、全身反応として,発熱,悪寒,頭痛、倦怠感などがありますが,通常,2〜3日中に消失します。非常に軽微なものだけです。
5)接種を進められない場合卵アレルギーの人(実際にはきわめてまれです。)ワクチンの成分にアレルギーのあることが明らかな人
6)接種のあとの注意
接種した場所は清潔に保ち、接種した日は過激な運動は避けましょう。
異常な反応や高熱など体調の変化があれば診察を受けて下さい。あらかじめ副反応を良く理解しておいてください。
インフルエンザワクチンは重症化予防が目的
現在我が国では不活化ワクチンが用いられており、感染防御能は生ワクチンと異なります。生ワクチンはIgAとIgGの二つの抗体を産生しますが、不活化ワクチンはIgG抗体のみ産生します。海外で使われている生ワクチンは感染局所である経鼻に直接投与することで、上気道に分泌されるIgA抗体も産生するため局所におけるウイルス増殖そのものを抑制し、インフルエンザの発症を予防が期待できます。不活化ワクチンはIgG抗体のみですので、下気道に対してしか効果がありません。最初の感染である上気道に作用しないため、発症そのものの予防というより下気道症状である肺炎の抑制など重症化の予防を重点目的としています。
近年、経鼻投与の不活化ワクチンも研究されています。
Q1 ワクチン接種について−効果的な手段を教えて下さい
A インフルエンザウイルスは毎年変異しながら流行し続けていますので,予防接種は毎年必要です。毎年使うワクチンは,世界各国や日本各地の流行状況を常に監視し,春から夏にかけての小流行が次のシーズンの主役になっていますので,この時期に分離されたウイルス株を中心に厚生省からワクチン株が指定されます。毎年製造されているワクチン株は流行株とよく一致しています。
効果的な使用法は流行期が通常12月から翌3月頃で,これに備えて12月には2回目の接種が終了するような接種計画を組み,1〜4週間の間隔で2回接種することです。集団においては2回接種した人をできるだけ多くすることが必要です。
Q2 ワクチンを1回だけ接種した場合の効果を教えて下さい。
A 接種が何かの都合で1回の場合があります。抗原変異の程度が少ない場合では1回でもかなりよく抗体は上昇しますが,2回の接種でさらに上昇します。
接種後の罹患率に関する調査では,2回の接種の方が1回接種のよりもかなり低く,効果もあるようです。1回だけでは,効果が十分ではありません。
65歳以上の高齢者に対しては1回の接種でも十分効果があるとする研究結果が得られており、1回接種でよいと考えられます。
13歳以上64歳以下の方でも、近年確実にインフルエンザに罹患していたり、昨年インフルエンザの予防接種を受けている方は、1回接種でも追加免疫の効果で十分な免疫が得られる方もあると考えられます。
Q3 ワクチン接種を受けたのに,かぜをひいてしまいました。
A かぜは多種類のウイルスによって起きています。したがって、ワクチン接種を受けた人であっても,当然のことながらかぜにはかかります。また、ワクチンを受けていてもときにインフルエンザに罹患することがあります。ワクチンの効果は約80%と言われています。
Q4 ワクチンを毎年連続して接種する理由を教えて下さい。
A インフルエンザウイルスは毎年変わりながら流行しますので,前の年に受けたから次の年のワクチン接種は必要ないということにはなりません。2年連続の接種と1年だけの接種では,罹患防止の有効率は2年連続して接種する方が2倍以上も高くなっていますので,連続して接種することが必要です。
Q5 高校生へのワクチン接種は必要でしょうか。
A 高校生の罹患率は5〜14歳のそれと比べて1/5程度ですが,まだまだ罹患年齢です。大学受験の機会もありますので,予防接種をおすすめします。
Q6 ウイルスの変異とワクチンの効果について教えてください。
A インフルエンザウイルスはその抗原性をしばしば変化させています。この抗原変異には軽微な変異(連続変異)と10〜20年ごとに1回大きく変わる変異(不連続変異)とがあります。
不連続変異ではウイルスが新型のものになりますので,古い型のワクチンでは効果が期待できません。
また,同一シーズンの流行で分離されたウイルスであっても,前の年のウイルスと似ていないときがあります。よく似ている場合にはワクチンは有効ですが,似ていない場合にはワクチンの効果は低下します。流行予測が確立している現在では,ワクチン株は流行株とよく合っていて効果が期待できます。
Q7 インフルエンザワクチンの予防接種の効果はありますか
A すべての予防接種は個人の予防のためです。インフルエンザも同様で,一人ひとりがワクチンの接種を受けてインフルエンザの罹患を防止し,集団内へのインフルエンザの侵入を阻止することによって,社会防衛の役割が期待されます。
ワクチンの効果は,罹患を防止し,あるいは症状を軽減化します。ワクチンが効かないからと考えて接種を受けないと,インフルエンザに罹患して,学校を休まなければならなくなったり、入学試験を受けることができなくなる場合もあります。また,最近の流行では,神経合併症や死亡例が発生しています。
ワクチンはこのようなことを防ぐことができます。接種率が低下しますと,インフルエンザの流行状況やウイルスのもつ病原性にもよりますが,場合によっては大きな社会的被害が発生することがありますので,できるだけ多くの人が接種を受けることが必要です。
Q8 インフルエンザワクチンの免疫の持続はどうでしょうか。
A 現在のワクチンは,残念ながら抗体の持続に関しましては,そう長くありません。注射後2週間できき始め,およそ5カ月ほどといわれています。一般的には,インフルエンザの流行のピークは年を越した2月前後にずれることが多いので,予防接種が早めに完了していますと,流行の際に抗体価が低下してしまう可能性があります。大切なことは4週間隔で2回的確に予防接種を行うことです。
Q9 流行株の型(例えば,ソ連型、香港型)について教えて下さい。
A ヒトのインフルエンザウイルスはA型,B型およびC型に大別され,さらにA型はHINl型,H2N2型およびH3N2型というような亜型に分類されています。現在のHINl型はソ連型とも呼ばれて,昭和52年から流行を繰り返しています。また,H3N2型は香港型ともいわれて,昭和43年から流行を続けています。
現在はソ連型,香港型及びB型の3種類株による複雑な流行様式をみせています。
Q10 高齢者がインフル工ンザで死亡するとの報道があります。欧米では老人への接種が一般に行われていますが効果はどうでしょうか。
A 欧米では,インフルエンザワクチンによる老人の入院や死亡の防止効果は70〜90%であることが証明され,ワクチン接種による医療費のコスト削減効果も報告されています。
Q11 新型インフル工ンザとその対応について教えて下さい。
A 新型インフルエンザの流行(汎流行)とは,1918年に大流行したスペインかぜのインフルエンザウイルスや1957年に大流行したアジアかぜのインフルエンザウイルスの再来,あるいは,トリのインフルエンザウイルスが直接ヒトの世界に飛び込んできて大流行を起こすことを指します。インフルエンザを積極的に予防する唯一効果的な方法は,予防接種です。高齢者,基礎疾患のある人がインフルエンザ予防接種の対象として,強調されていますが,過去の新型インフルエンザ登場の際には,多くの若年層が犠牲となりました。ワクチンの対象者は、老若男女、有病者、健康者のすべてですが、新型登場に備え厚生省で対策が検討されています。
Q12 妊婦は受けてもいいのですか
A 妊婦のいずれの時期でも安全といわれていますが、在胎16週以内にはワクチンは避けた方がいいでしょう。
A できます。ただ、ワクチンを製造するときにインフルエンザウイルスの増殖させるために孵化鶏卵を用いるため、わずかながら卵由来の成分が残存します。これによる卵アレルギーの副作用がごくまれに起こり得ます。
最近では高純度に精製されているのでほとんど問題となりませんが、重篤な卵アレルギーがある場合、例えば卵のものを食べるとひどい蕁麻疹や発疹が出るとか、呼吸が苦しくなるなどのアレルギー症状が出る子どもに対しては接種を避けることが望ましいです。しかし、どうしても接種の方が大切と考えられるときには、皮内テストなど行って、接種する必要があります 。