日本脳炎ワクチンについて・Q&A
平成29年10月 日本脳炎ワクチンの入荷数が減少しており、日本脳炎のワクチンを行うことが出来なくなっています。秋から冬にかけての時期ですから今大急ぎではないので、しばらくお待ち下さい。
平成22年5月25日から新しいタイプの日本脳炎ワクチンを接種しています。古いタイプのワクチンはもうありません。
是非、お子さんを守るために日本脳炎ワクチンを接種してください。接種しなければ日本脳炎の患者がいくら少ないとはいえ、少しずつ発生してくる恐れがあります。現に4年間の間に3人の子どもがすでに罹患しています。 ADEM(急性散在性脳脊髄膜炎)について
ある種のウイルスの感染後、あるいはワクチン接種後に、まれに発生する脳神経系の病気です。
感染後あるいはワクチン接種後、数日〜4週後(多くは1〜2週後)に急性に発症します。
病変部位により症状は多彩ですが、初期症状として髄膜刺激症状(頭痛、悪心、嘔吐、項部硬直、発熱、Kernig徴候など)を認め、通常の脳炎型では髄膜刺激症状以外に、意識障害、痙攣、片麻痺、失語、脳神経麻痺、小脳症状(眼振、小脳失調など)などがみられます。 ワクチン接種後の場合は、通常接種後数日から2週間程度で発熱、頭痛、けいれん、運動障害などの症状が現れます。
ステロイド剤などの治療により、完全に回復する例が多く、良性の疾患とされていましたが、運動障害などの神経系の後遺症が10%程あるといわれています。
発症後治癒したら、その後の再発はみられません。
ワクチン接種は毎年たくさんの子どもに行われるので、ワクチン後にADEMが見られた場合は、ワクチン接種によるものとウイルスなどの病原体の感染によるもの、あるいは原因不明のものとの区別が困難です。
以前の日本脳炎ワクチンは、製造の過程で微量ながらマウスの脳組織成分が混入する可能性があり、この成分によってADEMが起こる可能性が否定できないとされています。
組織培養法による新しい日本脳炎ワクチン
組織培養法による新しい日本脳炎ワクチンは試験管内で、培養したヒトや動物の組織・細胞でウイルスを増殖させるため、理論的には接種後のマウス脳成分による問題は起こる可能性はなくなります。
これまでの経緯
※2006年5月厚生労働省健康局結核感染症課予防接種係より「定期の予防接種における日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨のさしひかえについて」という以下の文書がきました。
1)平成17年5月、日本脳炎ワクチンによる健康被害の重症のADEM(急性散在世脳脊髄膜炎)がマウス脳の製法による日本脳炎ワクチンと因果関係があると判断されたことにより、現時点では、より慎重を期するため、定期接種として現行の日本脳炎ワクチンの積極的勧奨を行わないように勧告する。
2)よりリスクの低い組織培養法によるワクチンが現在開発中であることから、供給できる体制ができたときに供給に応じ、接種勧奨を再開する予定。
3)流行地へ渡航する場合、蚊に刺されやすい環境にある場合など、日本脳炎に感染するおそれが高く、本人またはその保護者が希望する場合は、効果及び副反応を説明し、明示の同意を得た上で、現行の日本脳炎ワクチンの接種を行うことは認められる。
これを改善したワクチンであるはずなのにまだ「同意書」なるものがあり、厚生省や市町村のやり方はおかしい感じがします。
以下の内容はほとんど変更しておりません。今後の状況によって、更新します。
1.予防接種の必要性
日本脳炎の患者発生は近年は少なくなっていますが,毎年各都道府県のと畜場に導入されるブタの抗体検査の結果を見ますと、日本脳炎ウイルスの汚染は全国的なレベルで起きています。免疫の程度が低くなる高齢者に患者発生率が高いことからも日本脳炎に対する予防接種は基礎免疫を確実に行うことと,忘れずに追加免疫を続けることが大切です。
日本脳炎ウイルスは水田に発生するコガタアカイエカなどの蚊によってウイルスに感受性のある脊椎動物の間で伝播します。人はウイルスを保有している蚊に刺されることによって感染、発症します。
日本脳炎ウイルスの人への伝播においてブタは重要な役割を果たしています。ブタは感染によって多量のウイルスを産生し,多くの蚊が感染ブタを吸血することによって,感染カのあるウイルスを保有するようになります。
日本脳炎の罹患率は1981年以降10万人に0.02〜0.03と低く,大部分の人は抗体を測定してはじめて感染があったことを知る不顕性感染です。
東アジア、南アジアに掛けて広く分布する病気です。
日本脳炎の症状
6〜16日間の潜伏期間の後、数日間の高熱、頭痛、嘔吐などで発病し、引き続き急激に光への過敏症、意識障害、神経系障害を生じます。
発症による致命率は15%程度と考えられており,なお神経学的後遺症を残す例が多く見られます。
幼少児や老人では死亡の危険は高くなります。
感染者1,000〜5,000人に1人が脳炎を発症すると考えられています。
わが国では,1966年までは年間1,000人を越える患者発生が記録されていましたが,ワクチンの普及と媒介蚊の減少及び生活環境の改善によって,1972年以降は100人以下になり,最近では毎年10人程度が西日本地区を中心に発症するにとどまっています。
2.予防接種の実際
基礎免疫と追加免疫によって感染防御に有効な血中の抗体価を維持する必要があります。日本脳炎の予防接種は1994年の予防接種法改正により,定期接種として実施されるようになりました。予防接種法による接種対象以外の人でも必要に応じて任意接種として個別に接種をすることができます。
1期初回:通常0.5mLずつを1〜4週の間隔で2回皮下に接種します。ただし,3歳未満の者に は0.25mLずつを同様の用法で接種します。
1期追加:1期初回終了後おおむね1年を経過したのちに0.5mLを1回皮下に接種します。 ただし,3歳未満の人には接種量を0.25mLとして同様の間隔で接種します。
2期:0.5mLを1回皮下に接種します。
3期:0.5mLを1回皮下に接種します。
[不完全接種者の接種]
日本脳炎の第1期(基礎免疫)が規定どおり接種できなかった場合は,以下の要領により接種します。
1)第1期初回接種だけで1年経過した場合
2回接種するか,1回接種して次年度1回接種する。
2)第1期初回接種1回のみで数年経過した場合
2回接種し,次年度1回接種する。
3)第1期 初回接種を2回完了後2年以上経過した場合
1回接種する。
Q1 未接種者及び不完全接種者のワクチン接種はどのようにすればよいでしょうか
A
基礎免疫を受けたが追加免疫を行わなかった人にはまず1回追加免疫の接種を行い,その後4〜5年ごとの追加免疫を受けるようしてください。
Q2 接種間隔は1〜4週となっていますが,それ以上になったときはどうすればよいでしょうか。
A
Q3 日本脳炎ワクチンの接種歴が不明の人に対してはどのようにすればよいでしょうか
A
Q4 非流行地の居住者は予防接種を受ける必要があるでしょうか。
A
同様の理由で東南アジア地方に滞在する人や,旅行を計画している人も日本脳炎ワクチンの接種を受けて下さい。
Q5 日本脳炎ワクチンによる抗体のでき方について教えて下さい。
A
また,追加免疫後の中和抗体価の推移を調べた成績によりますと約2年後の中和抗体価は最少有効抗体水準の10倍以上を維持していました。初回接種1回のみでは1年以内に10倍以下となっていますので,基礎免疫を確実に行って,さらに追加免疫によって抗体価を保持しておくことが大切であることがよくおわかりのことと思います。
堀内 清他:予防接種研究班報告書,195.1989.
金光正光他:Biken J,13,1970.
Q6 日本脳炎ウイルスの生態と流行について教えて下さい。
A
Q7 日本脳炎の患者発生の推移について教えて下さい。
A
日本脳炎ウイルスは毎年行われると畜場に導入されるブタの抗体調査によって,ほぼ日本全国に汚染が認められていますが,患者発生は減少し,低流行状態となっています。要因として,@水田の減少と稲害虫除去のために大量の農薬が散布され蚊が減少したこと。A小中学生の生徒の日本脳炎ワクチン接種率が高い水準にあること。B生活環境の改善により蚊に刺される機会が減っていることなどが考えられます。
日本以外のアジア諸国における流行の推移は,韓国では1988年のオリンピック開催に向けて日本脳炎ワクチンを大規模に接種した結果,1981年以降では患者が激減し,1983年以降は公式認定患者が皆無となっています。その他の中国本土,ベトナム,タイ,ネパール及びインドでは数千人以上の規模で発生が認められており,日本脳炎防御対策が急務となっています。
これらの国々の患者増加は,人口の増加と水田開発,養豚振興などの施策と関連しているといわれています。
五十嵐 章:臨床とウイルスー19,16,1991.
Q8 日本脳炎の抗体保有状況について教えて下さい。
A
25〜30歳代では保有率が低く,40歳代以上は高保有率です。このような抗体保存率の違いは移行抗体やワクチン接種による抗体の獲得及び自然感染による抗体が反映されているものと思われます。
厚生省・国立予防衛生研究所:伝染病流行予測調査報告書1991.
Q9 基礎免疫のうち,初回接種は2回受けましたが,翌年の追加接種を受けないまま4年が経ってしまいました。どうすればよいでしょうか。
A
QlO 日本脳炎ワクチンを初回接種を受けただけで、その後3年間接種を受けていません。どうすればいいでしょうか。
A
Q11 日本脳炎ワクチンの基礎免疫が完了しています。その後何年おきに追加免疫を行えばよいでしょうか。
A
Q12 日本脳炎の製造に使うウイルスが、従来使われてきた中山株から他の株に変わったと聞きますが、その理由は。
A
Q13 東南アジアなどへ出かける時は、日本脳炎の予防接種を受けた方がよいでしうか。
A
Q14 日本脳炎ワクチンの副反応の出現率はどのくらいでしょうか。
A
Q15 日本脳炎の流行していない地域における小学生のワクチン接種にどのような意味があるでしょうか
A