日本脳炎ワクチンについて・Q&A


★平成22年5月25日現在、新しいタイプの日本脳炎ワクチンを接種しています。年齢の高い9才から12才の2期については現在認可が降りていませんのでできません。古いタイプのワクチンはもうありません。

前回の厚生労働省の日本脳炎のワクチンの勧奨中止発表はあまりにも突然で、私も読売新聞一面にでていたことで初めて知りました。
要は100〜200万人に1人の副作用があり、あたらしいワクチンを開発中なので、積極的にワクチンをしなくてもよい、というものでした。

新しいワクチンが出るというので、いったん中止に近い状況となっていましたが、ようやく新しいタイプのワクチンを接種することができるようになりました。
是非、お子さんを守るために日本脳炎ワクチンを接種してください。接種しなければ日本脳炎の患者がいくら少ないとはいえ、少しずつ発生してくる恐れがあります。現に4年間の間に3人の子どもがすでに罹患しています。


※ここに至るまでに、現場は大変混乱していますが、このような事態を招いたのは1人の厚生技官のためです。現場の意見は何一つ反映されず、現状を見ることなく決定されたものです。その技官はもう辞めたそうですが、ワクチンができなくて日本脳炎にかかって重度の後遺症を残したり、亡くなったりした時、いったい誰が責任を取るというのでしょうか。

ADEM(急性散在性脳脊髄膜炎)について
ある種のウイルスの感染後、あるいはワクチン接種後に、まれに発生する脳神経系の病気です。
感染後あるいはワクチン接種後、数日〜4週後(多くは1〜2週後)に急性に発症します。
病変部位により症状は多彩ですが、初期症状として髄膜刺激症状(頭痛、悪心、嘔吐、項部硬直、発熱、Kernig徴候など)を認め、通常の脳炎型では髄膜刺激症状以外に、意識障害、痙攣、片麻痺、失語、脳神経麻痺、小脳症状(眼振、小脳失調など)などがみられます。 ワクチン接種後の場合は、通常接種後数日から2週間程度で発熱、頭痛、けいれん、運動障害などの症状が現れます。
ステロイド剤などの治療により、完全に回復する例が多く、良性の疾患とされていましたが、運動障害などの神経系の後遺症が10%程あるといわれています。
発症後治癒したら、その後の再発はみられません。
ワクチン接種は毎年たくさんの子どもに行われるので、ワクチン後にADEMが見られた場合は、ワクチン接種によるものとウイルスなどの病原体の感染によるもの、あるいは原因不明のものとの区別が困難です。
以前の日本脳炎ワクチンは、製造の過程で微量ながらマウスの脳組織成分が混入する可能性があり、この成分によってADEMが起こる可能性が否定できないとされています。

組織培養法による新しい日本脳炎ワクチン
組織培養法による新しい日本脳炎ワクチンは試験管内で、培養したヒトや動物の組織・細胞でウイルスを増殖させるため、理論的には接種後のマウス脳成分による問題は起こる可能性はなくなります。

これまでの経緯
※2006年5月厚生労働省健康局結核感染症課予防接種係より「定期の予防接種における日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨のさしひかえについて」という以下の文書がきました。

1)平成17年5月、日本脳炎ワクチンによる健康被害の重症のADEM(急性散在世脳脊髄膜炎)がマウス脳の製法による日本脳炎ワクチンと因果関係があると判断されたことにより、現時点では、より慎重を期するため、定期接種として現行の日本脳炎ワクチンの積極的勧奨を行わないように勧告する。
2)よりリスクの低い組織培養法によるワクチンが現在開発中であることから、供給できる体制ができたときに供給に応じ、接種勧奨を再開する予定。
3)流行地へ渡航する場合、蚊に刺されやすい環境にある場合など、日本脳炎に感染するおそれが高く、本人またはその保護者が希望する場合は、効果及び副反応を説明し、明示の同意を得た上で、現行の日本脳炎ワクチンの接種を行うことは認められる。

これを改善したワクチンであるはずなのにまだ「同意書」なるものがあり、厚生省や市町村のやり方はおかしい感じがします。

以下の内容はほとんど変更しておりません。今後の状況によって、更新します。

1.予防接種の必要性
 日本脳炎の患者発生は近年は少なくなっていますが,毎年各都道府県のと畜場に導入されるブタの抗体検査の結果を見ますと、日本脳炎ウイルスの汚染は全国的なレベルで起きています。免疫の程度が低くなる高齢者に患者発生率が高いことからも日本脳炎に対する予防接種は基礎免疫を確実に行うことと,忘れずに追加免疫を続けることが大切です。

 日本脳炎ウイルスは水田に発生するコガタアカイエカなどの蚊によってウイルスに感受性のある脊椎動物の間で伝播します。人はウイルスを保有している蚊に刺されることによって感染、発症します。

 日本脳炎ウイルスの人への伝播においてブタは重要な役割を果たしています。ブタは感染によって多量のウイルスを産生し,多くの蚊が感染ブタを吸血することによって,感染カのあるウイルスを保有するようになります。

 日本脳炎の罹患率は1981年以降10万人に0.02〜0.03と低く,大部分の人は抗体を測定してはじめて感染があったことを知る不顕性感染です。 東アジア、南アジアに掛けて広く分布する病気です。

日本脳炎の症状
6〜16日間の潜伏期間の後、数日間の高熱、頭痛、嘔吐などで発病し、引き続き急激に光への過敏症、意識障害、神経系障害を生じます。
発症による致命率は15%程度と考えられており,なお神経学的後遺症を残す例が多く見られます。 幼少児や老人では死亡の危険は高くなります。
感染者1,000〜5,000人に1人が脳炎を発症すると考えられています。

日本脳炎ワクチンの発症防止効果は,約80%と推定されています。

 わが国では,1966年までは年間1,000人を越える患者発生が記録されていましたが,ワクチンの普及と媒介蚊の減少及び生活環境の改善によって,1972年以降は100人以下になり,最近では毎年10人程度が西日本地区を中心に発症するにとどまっています。

2.予防接種の実際
 基礎免疫と追加免疫によって感染防御に有効な血中の抗体価を維持する必要があります。日本脳炎の予防接種は1994年の予防接種法改正により,定期接種として実施されるようになりました。予防接種法による接種対象以外の人でも必要に応じて任意接種として個別に接種をすることができます。
1期初回:通常0.5mLずつを1〜4週の間隔で2回皮下に接種します。ただし,3歳未満の者に は0.25mLずつを同様の用法で接種します。
1期追加:1期初回終了後おおむね1年を経過したのちに0.5mLを1回皮下に接種します。 ただし,3歳未満の人には接種量を0.25mLとして同様の間隔で接種します。
2期:0.5mLを1回皮下に接種します。
3期:0.5mLを1回皮下に接種します。

[不完全接種者の接種]
 日本脳炎の第1期(基礎免疫)が規定どおり接種できなかった場合は,以下の要領により接種します。
1)第1期初回接種だけで1年経過した場合
  2回接種するか,1回接種して次年度1回接種する。
2)第1期初回接種1回のみで数年経過した場合
  2回接種し,次年度1回接種する。
3)第1期 初回接種を2回完了後2年以上経過した場合
  1回接種する。

Q1  未接種者及び不完全接種者のワクチン接種はどのようにすればよいでしょうか

  日本脳炎ワクチンの効果を確実にするためには,基礎免疫を完了させ,その後の追加免疫によって感染防御に有効な中和抗体価を維持する必要があります。  基礎免疫を全く受けていない人は,初回接種から免疫を始め,翌年に追加接種を受けて下さい。
 基礎免疫を受けたが追加免疫を行わなかった人にはまず1回追加免疫の接種を行い,その後4〜5年ごとの追加免疫を受けるようしてください。

Q2 接種間隔は1〜4週となっていますが,それ以上になったときはどうすればよいでしょうか。

A  日本脳炎ワクチンの初回接種における接種間隔は,日本脳炎の流行前にできるだけ早く免疫をつけるために1〜4週間と定められていますが,ワクチンの効果は,4週をすぎて接種した場合も十分に認められますので,この間に健康状態のよいときに接種を受けて下さい。

Q3 日本脳炎ワクチンの接種歴が不明の人に対してはどのようにすればよいでしょうか

  抗体検査をして抗体価の低い場合に基礎免疫の接種を行うことも一つの方法ですが,日本脳炎ワクチンは頻回接種による副反応の心配はありませんから,抗体価を調べることなく基礎免疫から始めてもよいでしょう。

Q4 非流行地の居住者は予防接種を受ける必要があるでしょうか。

  わが国における日本脳炎ウイルスの汚染状況は,各都道府県のと畜場に導入されるブタのHI抗体価の動きによってわかります。これによると,毎年ほぼ全国的に日本脳炎ウイルスの伝播が繰り返し起きていることがわかっています。非流行地(患者発生のない地域)でも日本脳炎ウイルスに汚染されていると考えられることと,非流行地に居住していてワクチン接種を受けなかった人が,流行地に旅行してそこで日本脳炎に罹患した例もありますので,非流行地域の居住者に対しても,日本脳炎に対する免疫をつけるためにワクチン接種を受ける方がよいでしょう。
 同様の理由で東南アジア地方に滞在する人や,旅行を計画している人も日本脳炎ワクチンの接種を受けて下さい。

Q5 日本脳炎ワクチンによる抗体のでき方について教えて下さい。

  全く基礎免疫を受けていない人で接種前のHI抗体価が10倍以下の人では,基礎免疫終了後には16〜320倍(平均80倍)であり,中和抗体価は2〜16倍(平均7.8倍)となっています。追加免疫を受けた人では,接種前のHI抗体価10〜160倍(平均30倍)が4週後には40〜640倍(平均186倍)に上昇しています。中和抗体価も平均7倍から32倍に上昇しています。
 また,追加免疫後の中和抗体価の推移を調べた成績によりますと約2年後の中和抗体価は最少有効抗体水準の10倍以上を維持していました。初回接種1回のみでは1年以内に10倍以下となっていますので,基礎免疫を確実に行って,さらに追加免疫によって抗体価を保持しておくことが大切であることがよくおわかりのことと思います。
   堀内 清他:予防接種研究班報告書,195.1989.
   金光正光他:Biken J,13,1970.

Q6  日本脳炎ウイルスの生態と流行について教えて下さい。

   自然界では水田に発生するコガタアカイエカなどの蚊によってウイルスに感受性のある脊椎動物の間で伝播します。特にブタは感染により大量のウイルスを産生し,血液中にウイルスが検出されるウイルス血症を起こします。このウイルスを多量に含む血を蚊が吸血し,有毒蚊となってまたそれが他のブタへと伝播して,蚊からブタへ,ブタから蚊へのウイルス伝播のサイクルが成立します。この間に大量の有毒蚊が発生し,この有毒蚊に刺されることによって,ヒトは日本脳炎ウイルスに感染します。日本脳炎ウイルスの感染環においてヒト,ウマは終末宿主といわれています。日本脳炎ウイルスの罹患率は対10万人0.02〜0.03にすぎず大部分の人は不顕性感染となります。

Q7 日本脳炎の患者発生の推移について教えて下さい。

  わが国では,1966年頃までは年間1,000人を越える患者発生があって,その致命率も30〜50%と高いものでした。その後の患者発生数は激減し,1972年以降では100名前後となっています。近年では毎年10人程度が西日本各地を中心に発症するにとどまっています。
 日本脳炎ウイルスは毎年行われると畜場に導入されるブタの抗体調査によって,ほぼ日本全国に汚染が認められていますが,患者発生は減少し,低流行状態となっています。要因として,@水田の減少と稲害虫除去のために大量の農薬が散布され蚊が減少したこと。A小中学生の生徒の日本脳炎ワクチン接種率が高い水準にあること。B生活環境の改善により蚊に刺される機会が減っていることなどが考えられます。
 日本以外のアジア諸国における流行の推移は,韓国では1988年のオリンピック開催に向けて日本脳炎ワクチンを大規模に接種した結果,1981年以降では患者が激減し,1983年以降は公式認定患者が皆無となっています。その他の中国本土,ベトナム,タイ,ネパール及びインドでは数千人以上の規模で発生が認められており,日本脳炎防御対策が急務となっています。  これらの国々の患者増加は,人口の増加と水田開発,養豚振興などの施策と関連しているといわれています。
   五十嵐 章:臨床とウイルスー19,16,1991.

Q8 日本脳炎の抗体保有状況について教えて下さい。

  年齢別抗体保有状況を中和抗体価10倍以上の陽性率でみた場合,0歳児では37.7%ですが,1歳では29.1%,2歳で30.4%となり,それより上の年齢では高く,6歳以上で約80%以上となります。
25〜30歳代では保有率が低く,40歳代以上は高保有率です。このような抗体保存率の違いは移行抗体やワクチン接種による抗体の獲得及び自然感染による抗体が反映されているものと思われます。
   厚生省・国立予防衛生研究所:伝染病流行予測調査報告書1991.

Q9 基礎免疫のうち,初回接種は2回受けましたが,翌年の追加接種を受けないまま4年が経ってしまいました。どうすればよいでしょうか。

  初回接種2回だけでは,その年の流行期はしのげても,翌年の流行期には発病予防に必要な抗体量が血液中に維持されるかどうか疑問です。しかし,血液中の抗体の量は十分でなくても,抗原を記憶した免疫細胞はできていますので,免疫を初めからやり直す必要はありません。追加免疫として1回接種を受ければよいでしょう。

QlO 日本脳炎ワクチンを初回接種を受けただけで、その後3年間接種を受けていません。どうすればいいでしょうか。

  初回接種1回だけではその年の流行期にも発病防止に必要な抗体量を血液中に維持することは困難です。2回接種し,次年度1回接種して下さい。

Q11 日本脳炎ワクチンの基礎免疫が完了しています。その後何年おきに追加免疫を行えばよいでしょうか。

 基礎免疫完了後,あるいは追加免疫後,平均4〜5年間は発病防止に必要な量の抗体が血液中に維持されると考えられています。

Q12 日本脳炎の製造に使うウイルスが、従来使われてきた中山株から他の株に変わったと聞きますが、その理由は。

  平成元年度の接種から北京株ウイルスでつくったワクチンを使用することになりました。日本脳炎ウイルスも,インフルエンザほどではありませんが,株によって抗原性に多少の差異があります。従来使われていた中山株ワクチンは,中山株以外のウイルスに対しても発病を防ぐ効果はありますが,ワクチン株としては最近分離されたウイルスに対して,より共通な抗原性をもつウイルスを使うことが望まれ,この点で中山株より抗原スペクトルの広い北京株ウイルスがワクチン製造株となりました。

Q13 東南アジアなどへ出かける時は、日本脳炎の予防接種を受けた方がよいでしうか。

  日本では患者の発生が少なくなりましたが,アジアでは依然として大きな流行があります。時期にもよりますが、流行地に出かけるときはできれば受けておいた方が安心です。 基礎免疫を受けている人は1回追加接種を受けてください。全くワクチン接種を受けていない人は基礎免疫から接種してください。

Q14 日本脳炎ワクチンの副反応の出現率はどのくらいでしょうか。

  日本脳炎ワクチン接種により認められる副反応は,局所の発赤,腫脹,麻痺等,また、全身反応として発熱,悪寒,頭痛,倦怠感を認める場合がありますが,その程度は,低く,軽いものです。現行の北京株ワクチンに変更されたときの臨床試験成績においても,局所の反応としては発赤と軽度の腫脹が認められています。  また,稀にアナフイラキシー反応例が出ることがあります。

Q15 日本脳炎の流行していない地域における小学生のワクチン接種にどのような意味があるでしょうか

  日本脳炎の患者発生が認められないだけで流行がないと判断してはいけません。  先に述べましたように、北海道など一部の地域を除く各地でブタの汚染が認められています。ウイルスに汚染されていない地域の人でワクチン接種を受けていなかった人が,汚染地に旅行中に感染し,発病した例もあります。 したがって,免疫のない人や免疫の低下した高齢者は日本脳炎の危険性が高くなりますから小学生までに基礎免疫をつけ,追加免疫により日本脳炎から守ることが必要です。


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