便秘
便秘とは
便秘とは4日に1回でも柔らかいか、ふつうの固さで難なく出ていれば便秘ではありません。毎日便が出ても固くてころころで,出すたびに泣いて苦しむとか肛門が切れて血が出るという場合には便秘です。
(1)水分を十分に与える。風呂あがり,哺乳の合間に,番茶か野菜スープを。
(2)マルツエキス,砂糖湯(キザラの),ヨーグルト(1回20〜90ccをスプーンで)
(3)果汁を,1回20〜30ccを1日1〜2回与える。
(4)果物のすりつぶし,野菜の煮物,おかゆにたきこむ。
(5)運動不足にならないように,また外気浴を。
(6)こより浣腸、綿棒浣腸。
(7)市販の子供用浣腸(イチジク浣腸:年齢に応じて量を変えます))
その実験生後1〜3ヵ月のあかちゃんには,(1),(2),(3),(4)
生後4〜6ヵ月のあかちゃんには,(3),(4),(5),(6),(7)
生後7ヵ月以上のあかちゃんには,(4),(5),(6)、(7)
便秘によい食べ物
野菜:トマト,だいこん,かぶ,緑色葉菜,にんじん,ごぼう
果物:プラム,干しプラム,いちじく,ぶどう,干しぶどう,桃,いちご,アプリコツト,みかん,りんご,プルーンゼリー、なし,すいか,バナナも効くことがあります。
りんごで効く場合とそうでない場合があります。十人十色でいろいろ与えてみましょう。
海藻:わかめ,ひじき
その他:寒天,こんにゃく,7分づき米,麦めし,ぬか,全粒小麦を用いたパン,フレークなど。
リズムを大切に
何かを食べたり、ミルクを飲むと腸が動きます。このときにちょうど、便意を感じて、そのまま排便するというリズムが大切です。
朝食直後に冷たい水や果汁、牛乳を飲ませるのがいいです。朝食の後に大蠕動と言って最も腸がよく動くのです。このタイミングが良いのです。食後に5分間程度おまるに座らせたりすることが条件付けになります。
ベビーの場合もミルクと飲んだ後、便が出やすくなりますので、このときにおなかをゆっくりなぜてあげたりすると出やすくなります。
少し大きい児では便意があるとき、がまんすると便意が止まります。このままだと、便秘の原因になります。便意があるときそのままトイレに行く習慣をつけましょう。また、失敗しても叱らないようにしてください。叱られることで、便秘がひどくなることが多いのです。
- 乳児で何日も便が出ていなくても元気がよくきちんと飲む場合はあまり心配はいりません。1週間ほど便が出ず、来院されて浣腸するとべたっとした黄色の便が出ることが多いですが、これは問題ないことが多いです。
- マルツエキス(和光堂)は薬局に売っています。
- こより浣腸は、和紙のような紙でこよりを作り、ベビーオイルをつけて、すべりやすくして、肛門から2cmくらいさしこんで、コチョコチョ刺激します。あまり効果がないことが多いです。
- 綿棒浣腸は太めの綿棒にオイルをつけて、同じようにします。2〜3日に一回なら癖になりません。
- 市販の浣腸は頑固な便秘に対しては,積極的にする必要があります。癖になりません。頑固な場合は5日間連続でします。浣腸の仕方
便秘の薬は以上のことをしてもだめな場合に内服します。 - カチカチで浣腸をしなければ、何日もでない場合には小児科医に相談しましょう。
- 便秘は油断ができない病気です。1〜2歳頃から始まりじわじわ進んでいく傾向があります。だんだんひどくなる便秘は検査が必要なことがあります。
- 肛門が切れて痛がるときにはこれを治してやらなければ我慢して便秘がひどくなっていきます。きちんと塗り薬と使って直します。
- 進行するとある日突然夜中であろうが、早朝、日中激しく腹痛を訴えます。非常に痛みは強いようです。浣腸して便が出ると腹痛は改善します。
- 直腸に長い大きな堅い便が詰まった状態になると横から便の混じった粘液が肛門から流れてきます。遺糞症といいます。非常に大変です。
- 生後間もない赤ちゃんで、肛門を刺激しても排便が3日に1回もでないということがありましたら、『ヒルシュスプルング病』などの生まれつきの病気の可能性もあります。
- 生後6カ月以内の便秘は、肛門が、肛門括約筋(肛門を開いたり締めたりする筋肉)のあるところからずれた場所に開いてしまっているような生まれつきの問題をはらんでいる可能性もあります。こちらも早めに受診したほうがいいですね。
- 生後6カ月以降の便秘は習慣性便秘が最も多いです。排便が3日に1回くらいのタイミングになったら、食生活の見直しをします。それでもよくならないときは小児科に行くことをおすすめします。
便秘は進行します。便が硬くなり、肛門が切れ、痛みのため我慢するようになり、我慢するとなんとか待つことが出来るのでさらにたまるようになります。その結果便の先端は水分を吸収されるためさらに硬くなり、出にくくなります。
少しずつ進行して、その結果肛門のすぐ上にある直腸が大きくなってくることがあります。こうなると非常に難治性の便秘となります。最悪の場合 巨大結腸症という状況になり非常に治癒が困難になります。
難治性便秘の中にはヒルシュスプルング病が隠れていることがあります。この場合は小児科の先生と相談し、小児外科の先生に診ていただくことになります。
治療薬
お薬は便自体を軟らかくして便を出やすくするものと腸を刺激して便を出させるものがあります。内服治療をする場合は必ず浣腸をして、直腸を空にしてから行いましょう。
内服でうまく行き始めたら、3〜6ヶ月くらい長く使って習慣性にしていきます。
◎乳児期
カマグ(酸化マグネシウム) 0.5〜1g/kg 3分
ラクチュロース(モニラック) 0.5〜2ml/kg 分3
水薬で胃・小腸で吸収されないため、大腸に達して便を軟らかくする作用があります。ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)を併用することもあります。
◎幼児期
ラキソベロン 1〜15滴 就寝前 刺激性の便秘薬なので積極的にはおすすめしていません。
モビコール配合内服剤 2〜7才 1日1包 7才以上 1日2包
2019年に発売されました。便の水分量を増やし、効果を期待できます。実際に飲みやすいことできれいな便が出ているお子さんが増えています。飲みにくいというお子さんもいますが、全体的に効果が良いです。
モサプリドクエン酸塩(ガスモチン) 大建中湯 ともに小腸と大腸の運動機能を高めることで間接的に排便を促します。
◎学童期
センノシド(プルセニド) 12mg 1日1錠
◎内科で使うもの
酸化マグネシウム(マグミットなど) 成人1日2gを食前または食後の3回に分割あるいは就寝前に1回
マグミット 200mg 250mg 330mg 500mg カプセル 錠剤
★内服して調子がよくなってもすぐにやめないでください。
浣腸について
薬物療法のみで効果の乏しい場合は、浣腸を追加します。グリセリン浣腸を用いて、体重あたり1mlを目安にします。非常に硬い便塊を形成している場合、薬物療法以前に浣腸を1週間程度徹底して行い、便塊を除去した後に内服治療に移行するのがいいのです。
薬物治療の治癒率は5〜60%程度といわれています。
※やはり刺激して出すものより、基本的に便自体を軟らかくして便を出せるようにした方が状況としては良いと思います。
遺糞症
「幼稚園、保育園に入園する年齢になっても排便のコントロールができず、下着に便失禁してしまう状態が1カ月に1回以上あり、3カ月以上続いた場合を「遺糞症」といいます。
その背景にはしつこい便秘があり、石ころのように硬くなった便の周囲からやわらかい便が染みでて、便失禁をおこしてしまうのです。
また、遺糞症は女の子よりも男の子に多く、男の子では100人に1人程度にみられるといわれています」
原因
乳幼児期から続く習慣性の便秘が一番の原因になります。便秘の始まる時期はお子さんによって異なりますが、離乳食開始以降など乳児期におこることも珍しくありません。
お母さんに聞くと、たいてい『赤ちゃんのころから毎日便がでていなかった』という答えが返ってきます。ときに、厳しすぎるトイレットトレーニングなどの精神的な要因でおこることもあります。
便秘が続くと腸は太く長くなり、ますます便をため込みやすくなります。つまり、便秘が習慣化するわけです。便が硬くなると排便時に肛門が裂けるなどして、痛みを伴います。
そのため、硬い便によるつらい排便しか経験していないお子さんは、トイレは暗くて怖いところというイメージを持っていることが多いです。次第にトイレが嫌いになり、トイレに行くことすら嫌がってきます。 また、失禁によって親から叱られることも原因の一つです。自分では排便をコントロールできないから、怒られてもどうすることもできないのです。
次第に『うんちをすると怒られる』と思うようになり、『もう絶対にトイレではしない』と意固地になってしまうこともあるのです
遺糞症になった場合、放置すると便意を感じにくくなります。これは便秘が慢性化するとよくあらわれる症状です。さらに進行すると、大腸で便の水分が吸収され、コチコチの石のようになってしまいます。
これが栓のような働きをすると、便秘の薬は効きにくくなってしまいます。便栓は浣腸くらいでは取り除けません。遺糞症ではまずこれが治りを悪くする元凶といえます
排便を嫌がる、便をもらすなどの症状があらわれたら、病院を受診した方がいいということですね。
遺糞症は、便秘の治療によって改善することが多く、小学生のうちに治ることが多いといわれています。
言い換えれば、便秘を根本的に治療しなければ治りにくい病気です。便の臭いが原因でいじめの対象になるほか、便失禁について親や幼稚園・学校の先生から叱られることにより、ストレスからうつ病になったり、嘔吐や頭痛などの心身症の症状を起こしたりすることもあります。
「ただの便秘」と思っていたはずのものが、遺糞症という大きな問題へとつながってしまうことがあります。子どもの心身を守るためにも、遺糞症を防いでいきたいものです。
遺糞症について:東京女子医科大学小児科・主任教授 永田智教授 Kintre ホームページより