大腸菌は人の腸にも多く存在する細菌ですが、このうち、はげしい下痢などの腸炎を起こすものがあり、病原性大腸菌と呼ばれています。 その中でも『病原性大腸菌O157』はベロ毒素と呼ばれる強い毒素をつくる代表的な病原性大腸菌で、経口感染するものです。ベロ毒素が陽性のものを腸管出血性大腸菌感染症と呼びます。
O157以外にも多くの大腸菌が感染症状を起こし、中にはベロ毒素を出すものもあります。しかし、ベロ毒素が陰性のものがほとんどで、これらは一般の細菌性腸炎とあまり変わりません。O26、O11などベロ毒素が検出されることがあるようです。この場合は要注意です。 症状
病原性大腸菌O157や毒素産生するもの以外はあまり強い症状は出てきません。腹痛、下痢で発症します。発熱も認めることがあります。腹痛は強いことが多いですが、あまり強く訴えないこともあります。通常は発症後4〜8日で軽快します。 下痢は膿粘血便のことが多く、回数もかなり多いようです。
治療
初期に抗生物質を使うかどうかは症状によります。食事制限をし、水分を多めに取ります。特別な治療はあまり必要ありません。ときに輸液が必要なこともあります。
食事
一般的な食事療法が必要です。
下痢が激しいときは、水分だけにします。お茶、ポカリスゥエット、おもゆなどを与えます。水分は多く取らせましょう。
少し便が良くなったら、便と同じ固さのものを少量ずつあげます。
乳製品、冷たいもの、油で揚げたもの、繊維の多いものは避けます。
下痢のときの食べ物を参考にしてください。
注意すること
生の食品はできるだけ食べないようにしましょう。
1)生ものを食べるのは控えめに。気温が上がってきたら要注意です。特に生レバなどは危ないですね。
2)新鮮な材料を使いましょう。
3)加熱は十分に!
加熱する食品は内部まで十分熱が通るようにしましょう。
内部の温度が75℃以上で1分間以上加熱すればこの菌は死滅します。食品中のものの場合は5分以上加熱します。
加熱後は、細菌に汚染されないよう清潔に保存しましょう。
4)冷蔵庫を過信しないようにしましょう。
調理したものはできるだけ置かないようにしましょう。
細菌が増殖する時間を与えないことが大切です。
5)清潔な手と清潔な器具で!
食品を取り扱う前や用便後は必ず手を洗い消毒しましょう。
まな板、包丁
@十分洗浄し、熱湯をかけ、消毒薬で消毒しましょう。日光のあたる場所で自然乾燥させましょう。
Aまな板、包丁は、下処理用と仕上用とは区別しましょう。
食器・調剤器具
@洗剤でよく洗いましょう。
Aよくすすぎます。熱湯をかけ、その後水分を完全に拭き取って収納して下さい。
ふきんの取り扱い
@食器等を拭いたふきんは洗剤などでよく洗いすすぎます。
Aすすいだふきんは塩素系洗剤(ブリーチ・ハイター・ピューラックス等)を300〜500倍に薄めた駅に10分以上つけた後、水洗いします。
B日光がよくあたるところで干し、乾燥させます。
Cアイロンをかければさらに安全。
手洗い
@爪をよく切ります。
A石けんを使い流水でよく洗い流します。
B清潔なタオルやペーパータオルでふきます。
6)二次感染に注意!
@患者の糞便を処理する時は、ゴム手袋などを使用するようにしましょう。なおかつ手をよく洗います。
A患者の糞便の汚染された衣服などは、煮沸や薬剤で消毒したうえで家族のものとは別に洗濯し、天日で十分乾燥しましょう。
B患者がお風呂を使用する場合には、乳幼児などとの混浴を控えましょう。
トイレ
@トイレは常に清潔にしてあれば特別な消毒液などを使う必要はありません。
A用便後やトイレの掃除の後は石けんと流水でしっかり流して下さい。
7)ハエから食品を守りましょう
8)飲料水の衛生管理を!
水道水以外の水を飲用や調理に使用する場合は、定期的に水質検査を受け、飲用に適しているかどうか確認しましょう。
貯水槽の清掃、点検を定期的に行いましょう。