頭痛
定義・概念
頭痛は頭部に発症する疼痛の総称であり,頭蓋内の疼痛には主に三叉神経および上部頸神経後根からの分枝が関与しています。 これらは硬膜動脈や髄膜,静脈洞に分布し,とくに硬膜のなかでは中硬膜動脈の支配域に疼痛をきたしやすいのです。頭蓋外の疼痛には,頭皮,骨膜,筋膜が関与しています。 頭痛は主観的な症状であるため,客観的な症状把握が難しいです。小児では,年齢によっては自覚症状をうまく表現できない場合も多いです。そこで,慢性・持続性の頭痛においては, 症状の変化を客観的に把握するために,本人や保護者に頭痛ダイアリーをつけてもらったり,フェイススケールなどを用いて痛みの数値化をはかったりするような工夫を行うことが有用です。
発症機序・病態生理
頭痛の原因としては,血管性,筋肉性,脳や全身の病気によるものに大別されます。このうち,血管性の疼痛の代表が片頭痛です。 なんらかのトリガーにより脳の硬膜血管に分布する三叉神経が刺激され,三叉神経終末から痛み物質としての神経ペプチド〔サブスタンスP,セロトニン,カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)など〕が放出され,その結果として血管の拡張と炎症が起こり,頭痛が生じると考えられています(三叉神経血管説)が, 未だ確定はしていません。
片頭痛には視覚症状,感覚症状,運動症状など多彩な前徴を伴うことが知られていますが,これは局所の血流低下が,血管支配領域とは無関係に前方に広がっていく皮質拡延性抑制(cortical spreading depression : CSD)により生じると考えられています。
血管や硬膜の疼痛刺激は,三叉神経や大後頭神経の分布する頭蓋外構造とニューロンを共有し,関連痛として感じられることがあります。すなわち,頭蓋内内頸動脈では前頭部や眼の痛み,中硬膜動脈では側頭部痛,後大脳動脈では後頭部痛となる。
筋肉性の疼痛の代表が緊張型頭痛です。緊張型頭痛は頭痛の原因の7〜8割を占めると考えられていますが,片頭痛同様その詳細な機序は解明されていません。
ストレスや精神的・身体的緊張が誘因となり,頸部や後頭筋の収縮が生じて痛みに対して敏感となり生じると考えられています。そのため,症状は持続・反復しやすいのです。
鑑別診断
頭痛は,なんらかの基礎疾患があって発生する二次性頭痛と,そのような基礎疾患を有しない一次性頭痛に大別されます。
国際頭痛分類第2版(lnternationa1 Classification of Headache Disorders : ICHD- U )では,頭痛の主な原因疾患や病態により表1のように分類しています。
頭痛を主訴とする患者の診察では,症状がいつから始まっているか,どれくらい持続しているか,また随伴症状や痛みの性状と程度に着目して鑑別を進めていきますが,急性の激しい頭痛や基礎疾患を有する児に生じた頭痛では生命にかかわる疾患が原因である可能性も考え,精査をためらってはいけません。
とくに年少児では痛みを正確に訴えることが困難であり,全身状態,初期印象診断,神経学的所見,バイタルサインなどで重症度を判断し,鑑別を迅速に進め,対応していく必要があります。
小児の二次性頭痛の原因としては感染症や頭部外傷によるものが多く,とくに2〜5歳の幼児では7割が感染症による頭痛であるとされます。
ついで,副鼻腔炎,ウイルス性髄膜炎が基礎疾患として比較的頻度が高く,脳腫瘍による頭痛は0.4〜2.6%とされています。
基礎疾患や既往歴がなく,神経学的異常所見のない小児では,緊急での頭部CT検査は基本的に不要です。一方,脳室・腹腔シャントなどの基礎疾患を有する例や,全身状態が不良の場合,意識障害・麻痺・失調などの神経症状が進行する場合は,頭蓋内圧亢進などを疑い,頭部CTまたはMRI検査を施行すべきであります。
そのほか,朝方に嘔吐を伴うような頭痛や,最近発症した頭痛,遷延し徐々に増悪する頭痛は画像検査を考慮します。
問診と検査から二次性頭痛が否定的と考えられた場合は,一次性頭痛として対処します。小児の片頭痛の有病率は3.8〜13.5%,緊張型頭痛は17.4%と考えられています。
いずれの頭痛も中学生以降で多く,若干女性のほうが多いと考えられています。
A片頭痛の診断「片頭痛」の項を参照。
B緊張型頭痛の診断:小児の緊張型頭痛の診断は,成人同様ICHD-Uの診断基準(表2)を基にして行います。
C二次性頭痛:もっとも多いのはウイルス性疾患の感染症に伴う痛みです。感冒症状,周囲の流行などを問診し,咽頭などの身体所見を参考にします。髄膜刺激症伏や中枢神経症状,意識障害などを伴う場合は緊急度が高く,画像検査で水頭症や脳腫瘍の有無を確認し,髄膜炎を疑えば髄波検査をためらわずに行います。
朝方に増悪する頭痛や徐々に増悪傾向の頭痛も脳腫瘍などの器質的疾患を疑う端緒となります。圧痛を伴う頬や眼の周りの痛みがあれば,副鼻腔炎を疑い検査を行います。
片頭痛では視覚症状,嘔吐,聴覚症状,麻蝉などのさまざまな前徴症状が知られており,時にてんかんとの鑑別が必要ですが,片頭痛児にも脳波異常を認めることがあり,厳密に2つの疾患を鑑別することはしばしば困難です。
Dその他の頭痛:とくに学童期から思春期の慢性頭痛では,1日に4時間以上,Iか月に15日以上,3か月以上持続する慢性連日性頭痛(chronic daily headache:CDH)で生活に支障をきたす場合があります。
CDH の有病率は3.5%とされ,慢性片頭痛,慢性緊張型頭痛,薬物乱用頭痛などが含まれます。これらの患者には,頭痛が心身症や不定愁訴として表現される場合が少なくないのです。
起立性調節障害の合併例などでは,生活リズムの乱れ,夜更かしによる睡眠不足などによりさらに症状が増悪し,不登校に陥る場合も少なくないのです。生活リズムの乱れはさらに頭痛を悪化・長期化させることがあります。
群発頭痛は,短時間,片側性の頭痛発作と結膜充血,流涙,鼻漏などの頭部副交感神経系の自律神経症状を伴うことが特徴的で,ICHD-Uでは,三叉神経・自律神経性頭痛(Trigeminal autonomic cephalagias : TACs)という概念で記述されている溺,小児では少ない。
治療
@片頭痛:片頭痛では,まずは発作の誘発因子となる光,匂い,食物などを避けることが第一です。十分な休息と睡眠,規則正しい生活も重要です。薬物治療薬は急性期治療薬と予防治療薬に分けられるが,「片頭痛」の項を参照。
A緊張型頭痛:急性期治療は薬物療法が主体であり,鎮痛薬としてアセトアミノフェン,イプブロフェン(ブルフェン)は有効です。小児では非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)は推奨されません。しかし,治療困難をきたす薬物乱用頭痛に注意が必要であす。
予防治療には,成人では抗うつ薬を主とした薬物療法が施行されますが、小児ではあまり使用されません。非薬物療法としては,理学療法,運動療法,生活指導,認知行動療法などがあります。
ボツリヌス毒素の有効性は確立していません。
B慢性連日性頭痛:鎮痛薬の効果は乏しく,頭痛ダイアリーを用いて症状の可視化,客観化に努める。頭痛の増悪因子を把握し,生活リズムの改善,対症療法の評価を行います。
C二次性頭痛:原因疾患に対する治療を行う。
(文献 68)
慢性頭痛について ※実際に慢性頭痛の児が多いです。小学校の初めの頃から訴えるようになります。基本的な問診をして、危険な疾患が隠れているかどうかを推定して慢性頭痛が考えられるときは片頭痛か緊張性頭痛の可能性を考えて方針を決めます。家族歴を聞くと、母親が「片頭痛です」、という方が比較的多いのですが、実はきちんと診断されていないことが多いようです。自分で判断しているようです。
現在の特徴として、今の子どもたちはパソコンや携帯、タブレット、ゲームなどに集中していて眼と肩、頸部の緊張が非常に強くなっております。
緊張性頭痛の可能性が強い児は肩から頸部の筋肉を少し押すだけでもかなり緊張と痛みを感じることが多いです。この場合、お母さんには「このままではどんどん頭痛はひどくなり、繰り返します」と説明をします。
そのための時間をきちんと制限をし、ストレッチや運動をきちんと行うことで予防をする必要があります。 後頭神経痛
後頭神経痛は頭痛、かつ神経痛の一種で、
(1)大後頭神経痛
(2)小後頭神経痛
(3)大耳介神経痛
の3種類があります。それぞれ痛む場所が違うだけで、痛みの質や程度は同様です。いずれも以下のような症状が現れます。
・片側の首から後頭部・頭頂部にかけて痛む
・耳の後ろ側が痛む ・ビリッと一瞬電気が走るような痛みを繰り返し、痛みがないときも違和感・しびれ感がある ・チクチク、キリキリ、ズキズキとした痛み 神経の各部と名称
大後頭神経、小後頭神経、大耳介神経の3つは、いずれも頭を支える頚部の筋肉の間から皮膚の表面側に出ているため、筋肉による圧迫を受けやすいと考えられています。
そのため、猫背などの姿勢や頚椎の変形、長時間パソコンに向かうなどの同じ姿勢をとり続けること、精神的なストレスなどが発生のきっかけとなります。
また、肩こりが強い方もこの痛みを起こしやすいようです。
頭痛が起こると、不快で何か大きな病気が原因ではないかと心配になりますが、後頭神経痛は危険なものではなく、1週間ほどで自然に治る場合が多いです。
後頭神経痛は(https://www.saiseikai.or.jp/facilities/f01/2701-0036/ 大阪済生会野江病院 福田英俊先生) より。