結核
結核は決して「過去の病気」などではありません。1996年の調査でわが国では約3千人が結核で亡くなり,新たに結核として登録される人が年間4万人を超え,人口10万人当たりの新患者発生数34人は,欧米の先進諸国の数倍に上っております。結核の集団発生も後を絶ちません。最近では薬の効かない多剤耐性結核菌が問題になっています。
小児の有病率は10万人に対して、18.7人といわれています。その約3分の1は活動性結核といわれ、大部分が肺結核です。小児の感染は大部分が家族内感染ですが、最近は保育園、幼稚園、学校などの職員から感染する場合もあります。感染経路は飛沫感染、塵芥感染、経口感染、接触感染などと考えられています。
ツベルクリン反応(ツ反)について
ツ反は結核菌が感染しているかどうか調べる検査です。これは予防接種とは違います。
ツ反が陰性のとき
@結核菌が感染していない。
ABCGを接種している場合は、きちんとBCGがついていない。
B結核菌が感染した後10週以内の場合。
C重症結核の場合。
D麻疹、風疹、水痘、百日咳などにかかった後あるいはこれらの予防接種1ヶ月以内の場合。
E何らかの病気で、副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤を使用している場合。
Fツ反接種部位に副腎皮質ホルモンを塗っていた場合。
ツ反が陽性のとき
@結核菌が感染して、少なくとも2週間以上経過している場合。
ABCGを接種している場合は、BCGによる陽転。ただし、BCGを接種して10年以上経ているときには強陽性のときには感染が疑われます。
症状
初期変化群と呼ばれる場合は無症状のことが多く、あっても不定で、咳、発熱、食欲不振、顔色が悪い、機嫌が悪い、体重増加不良などを示します。
初期変化群よりも進展すると、乾酪性肺炎、粟粒結核、二次肺結核症、結核性髄膜炎などの重症型に急速になっていきます。
ですから早期の治療が非常に重要なのです。
診断
ツベルクリン反応によって結核菌の感染が推定されたとき、その感染が発病に至っているかどうか診断する事が必要です。
ツ反が陽転していなくても同一家族内に、現在結核症にかかっている人がいればその家族の中のこどもが結核症でないか調べておく必要があります。
結核症の診断には大部分が肺結核ですから、胸部X線撮影が必要です。
血液検査も行います。確定診断は結核菌を見つけることです。痰や胃液から結核菌が見つかれば確定します。
治療
入院の上、効果のあるいろいろな抗結核剤を使用します。
発病予防
ツ反が自然陽転した場合、6〜12ヶ月が重要です。この間に発病するものが50〜80%といわれています。年長児の場合、この間はバランスのよい食事とし、睡眠を十分に紫外線など長時間浴びたりしないようにしましょう。過激な運動もひかえ疲れすぎないようにしましょう。乳幼児の場合は後述しますが、多くの場合は予防内服をいたします。
予防内服
乳幼児が自然陽転した場合、発症しやすく、しかも重症化しやすいので、発病予防をきちんとしておきたいものです。
胸部X線像や検査で異常が見られないが、発病の危険が高いとおもわれる児には抗結核剤を6ヶ月から1年投与します。
家庭での注意
ツ反が陽性の児のいる家庭は家族ぐるみで検査を受けておきましょう。
予防
@子どもの結核の予防はBCGが有効です。
結核の予防のために,BCGワクチンを接種します。これは定期接種です。
結核に対する抵抗力は母体からもらうことができないので,生後間もない赤ちゃんでも,結核にかかる心配があります。特に,抵抗力の弱い乳幼児は,結核性髄膜炎や粟粒結核など非常に重症な結核にかかりやすいのです。これらのものに対してBCGはきわめて有効です。
したがってBCGをできるだけ早い時期(0才のうちに)に接種する必要があります。
A成人の方は毎年検診を受けましょう。
B長びく咳があるときにはきちんと医療機関を受診しましょう。
C規則正しい生活をしましょう。
D近くに結核にかかった人がいたら検診を受けましょう。
その他
高齢になると免疫が落ちてきて、結核の発病が抑えられなくなり、発症する危険が出てきます。
若い人たちはこれまで自然感染する機会がほとんどなくなってきて、結核のお年寄りから感染する率が高くなっています。不摂生な生活を送っていると感染を受け、発病しやすくなります。