腸炎ビブリオ


 腸炎ビブリオ(という名前の細菌)は普通、海水中に含まれ、夏に増加します。海水に近い3%食塩水の環境で増殖がもっとも盛んになります。ほとんどの感染は夏に起こります。生や未調理の海産物、特にカキ、カニ、エビを食べることにより感染します。人から人にうつることはありません。潜伏期間は5時間から92時間です。
感染が皮膚の傷から起こることがあります。免疫抑制状態の患者さんは組織壊死を起こすことがあります。免疫抑制状態にある患者さんや肝臓病を持つ方は腸や皮膚感染から敗血症にかかりやすく、その後ショックや皮膚壊死を起こして、死に至ることがあります。

症状と経過
下痢が最も多く、水様性の便で、強い腹痛がでます。嘔吐も見られます。
熱は軽く、38゜C以下のことが多いようです。頭痛、悪寒が出現することもあります。

多くの場合、特別に治療しなくても2〜5日間ほどで軽快しますが、まれにチアノーゼ、ショック症状などの重篤な症状を呈することがあります。
これは本菌の病原性に関係のある耐熱性溶血毒(TDR・TRH)による心臓毒性や下痢、嘔吐などによる脱水症が直接の原因と考えられています。

診断
夏に生の魚介類など食べた後、激しい腹痛と水様性の下痢があれば、疑います。便の培養は簡単ではありません。
傷口から海水が侵入したり、汚染された貝類を扱うことで感染する場合もあります。ビブリオ感染が起こりやすい人として、肝臓病の患者さん、胃散の酸度が低い人、HIVウイルス感染を含む免疫抑制状態の人などです。

治療
自然治癒傾向が高いので、特に水分を多めに取る以外は特別な治療は必要ありません。

食事
一般的な食事療法が必要です。
下痢が激しいときは、水分だけにします。お茶、ポカリスゥエット、おもゆなどを与えます。水分は多く取らせましょう。
少し便が良くなったら、便と同じ固さのものを少量ずつあげます。
乳製品、冷たいもの、油で揚げたもの、繊維の多いものは避けます。
下痢のときの食べ物を参考にしてください。

注意すること
生のの魚介類は充分に調理します。生の魚介類を食べるときには新鮮なものを食べましょう。すぐに食べないものはすぐに冷凍しましょう。海の中ですりむいたときには新鮮な水で洗い流しましょう。肝臓病や免疫抑制のある全ての小児は生のカキやアサリを食べるのを止めましょう。

その他
過去に世界的に腸炎ビブリオのO3:K6という血清型の菌が流行しています。 (文献 28)
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