エルシニア感染症
エルシニア菌は動物寄生性のグラム陰性、球桿菌です。豚、牛、羊、ウマ、犬、猫、モルモットなどのほ乳類、カエル、魚類などから検出されますが、鳥類からは検出されることはあまりありません。人に腸管感染を起こすのは、Yersinia enterocolitica と Yersinia pseudotuberuculosis の2種類でほとんどはY.enterocolitica によるものです。菌を持つ動物の糞便に汚染された食物や水を摂取することで感染します。動物との口から口への感染も考えられています。潜伏期間は平均5日(2〜11日)です。感染性は強くなく、人から人への感染はまれです。小児の方が成人よりも感染を受けやすく、保育所や小学校で集団感染が起こることがあります。 症状と経過
Yersinia enterocolitica感染では下痢、腹痛、発熱、嘔吐があり、程度はいろいろです。乳幼児では胃腸炎のみのことが多いようです。年長児では右下腹部の腹痛を伴い、この場合、回腸末端に炎症をおこしていることが多く、回盲部の著しい腸管膜リンパ節腫脹が見られます。そのためしばしば虫垂炎と間違えられることがあります。下痢が長く、1〜2週間続くことがまれではありません。約20%で血便を伴います。免疫抑制状態の人は菌血症などを起こし重症化しやすい傾向があります。年長児や成人では感染後2〜6週で関節炎や結節性紅斑を起こすことがあります。水様性の便で、嘔吐、強い腹痛があります。
頭痛、悪寒が出現します。
Yersinia pseudotuberuculosis の場合、発熱、発疹、腹部症状が主です。特に乳幼児では川崎病のような症状を呈すことがあります。一時原因説として浮上しました。しばしば、発疹、落屑、眼球結膜の充血、イチゴ舌、リンパ節腫脹が見られ、川崎病の診断基準を満たすものがあります。また、急性間質性腎炎を起こし急性腎不全(約10%)に至ることもあります。免疫不全のある人には敗血症、髄膜炎、骨髄炎を起こすことがあります。
しかし、多くは自然治癒します。
診断
今のところ簡単には調べられませんが、血液を調べ、発症3〜4週後にO3あるいはO9抗原に対する抗体が128倍以上または、ペア血清で、2管以上の上昇で感染が疑われます。腸炎の場合、便培養でエルシニア菌陽性。 治療
自然治癒傾向が高いので、食事制限をし、水分を多めに取る以外は特別な治療は必要ありませんが、ときに重症化するので、この場合は抗生剤を使用し、入院治療となります。
トリメトプリンサルファメトキサゾール(ST合剤)、セフォタキシム、フルオトキノロンなどが効果があるとされています。
腎不全の場合は水・電解質の管理をおこなうことにより、予後は良好ですが、まれに透析が必要となることがあります。 食事
一般的な食事療法が必要です。
下痢が激しいときは、水分だけにします。お茶、ポカリスゥエット、おもゆなどを与えます。水分は多く取らせましょう。
少し便が良くなったら、便と同じ固さのものを少量ずつあげます。
乳製品、冷たいもの、油で揚げたもの、繊維の多いものは避けます。
下痢のときの食べ物を参考にしてください。
(文献 28, 31)